これは……でっかいスクリーンで観たかった…。3D、まさに「ザ・前景/中景/後景」て感じだなーと思ってたら太陽光線や霧の迫り方はおおと驚いた。でも別に2Dでもよかった。それよりスクリーンはでかい方がいい。ドキュメンタリーというかほとんどファミリービジネス的な回想フィクションとなっている。
30年前セゾン美術館と佐賀町エキジビット・スペースで観たアンゼルム・キーファーの個展『メランコリア 知の翼』での衝撃を超えることはもう無いのだろうと思う。大作(と言ってもキーファーの作品では標準サイズ)「リリス」を前に1時間近く立ち尽くし、会期中何度も足を運んだ。その後箱根彫刻の森美術館での展示が最後くらいだったか、もう国内でキーファーの大作を観られるチャンスはほぼ無い。なので来年の二条城個展は期待してるのだけど、雑念だらけでもう素直に観ることはできなさそう。(先日のファーガス・マカフリーでの個展もそうだった…)
別のところにも書いたけど、ヴェンダースはとくに90年代以降矢鱈広い交友関係とネタ探しの巧さが映画と結びつき、「芸術映画ビジネス」として成功している印象が強い。お前がヴェンダースの何を知ってるのかと言われれば、またビジネスの何が悪いのかと言われればそれまでだけど…「芸術」にはぜひ金使ってほしいけど、「いかにも芸術の顔をしながら金の臭いのする芸術」は勘弁と思ってしまう(それを逆手に取ったのが村上隆か)。ヴェンダースがキーファーを取り上げると聞いた時点で、どうしてもその印象が拭えなくなった。
と言ってもキーファー自身がこんな巨大なアトリエを南仏に維持してて、その巨大アトリエを本人が自転車で経巡り、バーナーの炎で作品の藁を燃やしてはたくさんの助手たちが水かけて消火する様子をみて、彼もやはりビジネスに成功したセレブリティであることを知らされる内容となっている。
一定の質を保ちながらヒットしたテーマや手法のバリエーションで制作し続けられることは、確実に収益を得て長く活動できる作家の条件でもあるのだろうなと。作品がいいのに注目されない作家はたくさんいるけど、現世で注目され成功する作家は戦略がとても巧いということを再認識する機会となった。