イチロヲ

けんかえれじいのイチロヲのレビュー・感想・評価

けんかえれじい(1966年製作の映画)
4.0
童貞を拗らせているカトリック教徒の青年(高橋英樹)が、人間社会の不条理に抗うための喧嘩術を学び取っていく。昭和10年を舞台背景にして、当時の青年たちのユースフルデイズを描いている、ヒューマン・ドラマ。鈴木隆の同名小説を原作に取っている。

前半部は「反社会的なことをしている俺かっこいい!」という、多感な年頃にありがちな言動を「滑稽なもの」として描いていく方向性。実直な性格の主人公が周囲に流されて、右往左往するところが面白い。

後半部に入ると、日常から矛盾点を見いだした主人公が、厭世気分を滾らせていく。悪いことは何も言っていないのに、どういうわけか社会的制裁を受ける立場にされてしまう。人の世に蔓延る不条理劇が、痛烈に繰り広げられる。

何よりも、好きな女の子と「目を合わせられない、手も握れない」という、純愛表現を描写しているところが素晴らしい。「手を握った時点で、それはもう純愛ではない」と筆者は考えているので、本作の純愛表現には本当にドキドキさせられる。
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