mimitakoyaki

イカとクジラのmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

イカとクジラ(2005年製作の映画)
4.3
見ててほんとにイタイですね。
共同親権みたいな形で子どもを交代で家に呼んで見るけど、子ども達にはほんまに居場所がなくなっていく感じが良く描かれてます。

思春期の2人の子ども達の心の痛み、もちろん離婚を通して浮き彫りになるけど、この両親に育てられた息子達の色んなセリフや行動は、目の前の理不尽さをどうしていいか分からずに悶々としたり、居場所や愛や安定を求めていたり、思春期ならではの感傷が伝わってきます。

父と母もそれぞれ身勝手と言えばそうですが、自分自身を保つのに精一杯虚勢を張ってるようにも見えます。
子ども達の事も愛してはいるけど、自分の事を優先したりしてて、もう少し自分自身と向き合ってたら・・・って思いましたね。
でも、こういう人間のダメな部分、挫折感みたいなところが何かリアリティがすごくあるように感じました。

浮気ばかりする母に対して嫌悪感を募らせていた長男が、それでもやっぱり母親を求めてる、昔の優しかったお母さんが大好きだったっていう気付きのシーンは良かったです。そしてこのタイトルも。

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2回目: 2020.1.30

「マリッジストーリー」がとても良かったので、久しぶりにこの作品も見返して見ましたが、この頃にはすでにバームバック監督の作風がしっかりと確立されてて、「マリッジストーリー」との繋がりをとても感じました。

とにかく人物描写がほんとに丹念で、もはや「欠陥」レベルと言って良い両親(特に父親)の人間性、一筋縄ではないややこしさをこれでもかという程繊細に描かれていて、監督の脚本や演出も素晴らしいのだと思いますが、それを演じる俳優もまたほんとに実在感たっぷりに演じていて、素晴らしいとしか言いようがありませんでした。

人間的にどうかと思われるような両親ですが、それでも憎めないものもあるし、弱さなど人間くさいところがちゃんと描かれてるから、どこかでわかる気もしたり、人生や人間関係、家族のままならなさがユーモアと皮肉たっぷりでコッテリ描かれていて、これは昔見た時よりもうんと良さを感じる事ができました。
ノア・バームバック監督の作家性がとても好みで、信用できるし大好きだとあらためて思いました。

13
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