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暗黒街のふたりのtjZeroのレビュー・感想・評価

暗黒街のふたり(1973年製作の映画)
3.7
銀行強盗の首謀者として服役していたジノ(アラン・ドロン)は、保護司のカズヌーブ(ジャン・ギャバン)の尽力により出所し、地方の町で更生を図るのだが、かつての彼を知る警部に執拗に付きまとわれ、心身のバランスを崩していく…。

文句は最初に、ひとつだけ。
この邦題はよくない。ドロンとギャバンのW主演でこのタイトルだったら、ギャングの抗争を描いたノワールを期待するでしょう。
実物は、犯罪者の更生や死刑制度の是非をテーマにした社会派映画。
つまり、『ゴッドファーザー』ではなく、『デッドマン・ウォーキング』に近い(ちなみに原題は”街のふたり”の意)。

予想とは違ったけど、中身や出来はいいですよ。いわゆる良作の部類。

ドロンは保護司ギャバンのあたたかい”見守り”によって順調に更生していくんだけど、”色眼鏡”で見る警部によって追い詰められ、我を失ってしまう。

再発防止のために、前科者に目を配るのは必要なのだろうけど、あくまでも”見守り”に努めるべきで、決して”色眼鏡”で見てはいけない…ってことがよく分かるし、ひしひしと伝わってくる作品。

監督・脚本のジョゼ・ジョヴァンニは実際にギャングから更生して作家&映画監督になった人であるし、死刑宣告を受けた経験もあるらしいから、真に迫った描写というか、魂からのメッセージ…みたいな感触もある。

製作・主演のドロンにしても、私生活では裏社会とのつながりを噂されていたから、”色眼鏡”の恐ろしさを骨身にしみて感じていたのかもしれない。

本作の邦題を見て勝手に内容を決めつけていた自分のように、”色眼鏡”やレッテル貼りには充分気をつけたい。
レビューを書く時だけじゃなく、他人や世の中をジャッジする時でも、”色眼鏡”をかけてないか、自己チューの判断をしていないか、常にチェックしておきたいモノであります。
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