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汚名のtjZeroのレビュー・感想・評価

汚名(1946年製作の映画)
4.2
1946年のマイアミ。
父がスパイ容疑で投獄されたアリシア(イングリッド・バーグマン)は、諜報員デヴリン(ケイリー・グラント)が用意した汚名返上のオファーを受諾。
ブラジル在住の東ドイツの組織を罠にかけるため、ふたりはリオへ✈…。

007最新第25作が公開延期になって1年以上が経ち、わが家の前売券もホコリをかぶっております😢。
ボンドマニアとしての渇きを癒すべく、本作を”アルフレッド・ヒッチコック監督が007を撮ったらどうなるか?”という観点で観てみました。

デヴリンを演じるグラントは、007の第1作『ドクター・ノオ』が映画化される時に、原作者のイアン・フレミングがジェームズ・ボンド役に熱望したほどですから、諜報員役がオーダーメイドのスーツのように馴染んでいます。
また、彼が主演したヒッチコックの『北北西に進路を取れ』のトウモロコシ畑でセスナ機に襲われるシーンは、第2作『ロシアより愛をこめて』でボンドが🚁に襲撃される場面に大きな影響を与えています。

本作がヒッチらしいスパイ映画だなあ、と思うのは、ヒロインを演じるバーグマンの方に重きが置かれているところです(彼女が”ボンドガール”なのですから、ぜいたくな007映画ですねえ)。

そのため、銃撃戦こそありませんが、スリリングかつロマンチックラヴ・シーンが満載です。
恋心や嫉妬心が機密のようにやりとりされ、最上級の暗号が”I Love You.”である…という徹底ぶり。
サスペンスな場面をラヴ・シーンのように撮り、恋愛をサスペンス映画のように撮る…と称揚されるヒッチコックの面目躍如であります。

ヒッチの50本以上のキャリアの中で、スパイものは『バルカン超特急』、『海外特派員』、『引き裂かれたカーテン』…などなど、十数本を占めますからかなりのウエイトです。
1本くらい本家のボンド映画も撮って欲しかったなあ、とファンとしては思いますが、もはや叶わぬ夢なので、『キングスマン』のマシュー・ヴォーン監督や、『TENET』のクリストファー・ノーラン監督に21世紀仕様の極上のスパイ映画をこれからも期待したいと思います。
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