真鍋新一

縄張(しま)はもらったの真鍋新一のレビュー・感想・評価

縄張(しま)はもらった(1968年製作の映画)
3.8
時代の流れで変容を余儀なくされた日活アクションのひとつの答え、のように思える映画。相変わらず敵はヤクザ組織であることは変わりないが、主人公も落ちぶれた組織の人間であり、さらに合法ビジネスの皮を被って抗争を仕掛けていくという話で、その構図はかなり複雑なものになっている。

アキラはすでに役者の格が上がっているので、賭場でイカサマ破りをやったりするのは若手の藤竜也のお仕事。その昔、こういうやり口でヤクザどもを蹴散らしてきたアキラだが、それが許される大らかな時代ではすでになく、藤竜也は壮絶なリンチに遭う。これまでの約束が通用しない時代に苦しい戦いを強いられるアキラが作品のテーマとも言える。

ただ、安心感があるのは往年の作品と同じく、アキラのそばにはジョーがいること。特に時代が変わっても相変わらず不敵なジョーのほうがキャラクターの耐久性があるのが興味深い。そして一方の敵側には高品格や弘松三郎がいるので、たった10年足らずの間にすごい勢いで社会の情勢が変わっていったことがシンプルに比較ができる。

ところで劇中、黛ジュンの「天使の誘惑」がやたらとかかっている。ちょっと頻繁にかかりすぎなんじゃないかと思うが、1968年のメガヒットなので実際巷ではこんな感じだったのかもしれない。

リンチされる藤竜也を放置しつつも、気になってゴーゴーダンスに集中できなくて気分が悪くなってしまう川地民夫のシーンがとても良かった。
真鍋新一

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