佐方和仁

エドワード・サイード OUT OF PLACE 4Kの佐方和仁のネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

最後のシーン。シューベルトの音楽とともにサイードのお墓、静かな雨、そしてレバノン南部難民キャンプに住む、コーヒーを売って暮らしの糧をえているあの人が歩いてる姿が映って(雨降ってたっけ?)その人がなぜだか冬が好きだ、という話をしていたのを思い出した。あれはガスかな?火を炊いて、大きな鍋にコーヒーが入っていて、その日の準備をしているのだろうか、それをしながら冬が好きだという話をしていた。トタンの屋根の話をして、過去の話を、冬は過去をよく映す、というような話をしていた気がする。

音楽に少しは期待が持てるかもしれないというサイードの書き記したことを聞き、自分もそれに共感して音楽に期待してドキュメンタリーを見ていたが、あの街の名前はなんだったか、タバコを生産するあの爺さんが住む街、あの街では子供達が一緒に勉強することも、音楽を演奏することもない、と言っていた。でもあの爺さんはイスラエル人に対してうまくやっていくしかない、怒りはあるか?と聞かれて、ない、と答えていた。双方の、多様な一人一人の人間がいた。
イスラエルに移住したユダヤ人も東ヨーロッパだけでなくいろんな国から多様なユダヤ人が移り住んでいる。

自分には故郷がないこと、境界に居続けること、潮流の束。


個人的には坂本龍一が死も間近になり体力がなくなって音楽を聴けなくなってしまったときにずっと雨の音を聞いていたことを思い出した。坂本龍一が亡くなったときにも雨が降っていたそうだ。
ある詩の最後の連に、慈雨、という言葉が出てきて、あの雨のことを言葉にすると慈雨だったのだと教えられた。

その雨と冬が慈しみのようにどこかで響いているような気がした。
佐方和仁

佐方和仁