円柱野郎

河童のクゥと夏休みの円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

河童のクゥと夏休み(2007年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

一見すると江戸時代から眠りについていた河童と、普通の一家である上原家の人々との出合いを軸にしたストーリーが展開するファンタジーだけど…。
子供達の生活や行動、河童の存在を知ったマスコミの大騒ぎ、何かを失ってしまった人間文明のリアルさはファンタジーとは思えないね。
そのリアルさが河童が存在する物語の信憑性になっているんだと思う。
だからこそ感情移入も出来るし、絵空事ではあってもジーンと感動してしまうのだろう。

この作品を観ていると、やはり人間は残酷な生き物なのだとつくづく思ってしまうのだけども、それでも主人公一家の様に、個々人について人間は悪意を持っている者が全てではないというのがこの作品のテーマか。
でもそれが波となって押し寄せた時の、河童の存在が明るみになった後の一家を取り巻く取材の違和感と言ったら無い。
他社を思いやることの欠如があのような取材を行う原動力なのだとすれば、それは子供のイジメと変わらない。
そこに悪意が無い分だけ余計に質が悪いかもしれない。
そんな部分も真っ正面から描いてくれたこの作品は良いですね。

そういう部分とは別に、主人公と河童のふれ合いや友情は清々しい。
河童のキャラクターも絶妙。
田んぼに囲まれた道を行き、清流で泳ぐという原風景とも思える光景には、コンクリートジャングルの虚しさを感じたりもする。

絵は「クレヨンしんちゃん」のキャラクターデザインの方が行っているので、一瞬「しんちゃん」の雰囲気が垣間見えたりもするけど、良い具合にデフォルメされた人々は暖かみがあって良い。
それにしても水の表現は良かった。
あの透明感と水の反射…。
CGを使って、さりげなくも見事に水の清浄さを表現しているね。
あんな河で泳ぎたいw

最後に、犬のオッサン、あんたは最高に良い奴だ。
助演男優賞だw
円柱野郎

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