本作は『シン・デレラ』というタイトルを最初に知った時点で大分、うわぁ…、ってなったし、映画館のロビーで中高生くらいの男の子たちが「『シン・デレラ』ヤバくね? これはクルでしょ!」とか言ってたのを聞いたときに心中では(こんな映画配給会社の担当者が庵野のシン・シリーズとかかる邦題を思いついたから勢いで勝っただけのクソ映画に違いないぞ)と思ったものだったのだが、実際に観てみるとまぁ範疇的にはクソ映画とかバカ映画の中に含められてもムキになって反論したりはしないが第一印象で思っていたほどのクソ映画でもなかったですね。そこそこ観れる映画でした。
ま、そこは事前に大分ハードル下げてたせいもあるかもしれんが、しかし存外悪くはなかったというのは事実である。チープさとかも当然あるのだが、失笑してしまうほどって感じでもなくて実にちょうどいい感じのB級映画ってところじゃないだろうか。その辺含めてちょっと懐かしいテイストのホラー映画のノリで安心感がすごかったよ。ま、そこの安心感があったというのも有名なホラー作品からの引用が多かったというところもあって、この『シン・デレラ』という作品単体でいくとイマイチ尖った部分は無いなぁとも思ってしまうのだが…。
お話は…まぁわざわざ書くほどのこともないのだがかの有名な古典童話の『シンデレラ』の恐怖バージョン的なやつです。本家『シンデレラ』ではご存知の通りに継母やその娘にいじめられたシンデレラが王子様に見初められることによって立場大逆転! かくしてシンデレラは玉の輿に乗りました、というお話だがこの『シン・デレラ』では事はそう上手くは進まずに救い主であった王子様も嫌な義理の姉と一緒にシンデレラをいじめてくる始末。ならば全員この手でぶっ殺してやんよ! というお話しであります。本当にそれだけの映画なのでぶっちゃけあんまり感想とかも書くことがない。
まぁでも思い返すと数年前にまさかのスマッシュヒットを飛ばした『プー あくまのくまさん』に続いて邦ホラーでも『花咲か爺さん』やら『桃太郎』のホラーバージョンの映画が作られたし、未見だがつい先月くらいにも『不思議の国のアリス』のホラーバージョンの映画も作られていたはずなので童話ホラー的なブームがホラー界隈には訪れていて本作もまぁその一環ということなのだろう。四半世紀くらい前には『本当は怖いグリム童話』とかの書籍がベストセラーになっていたからそういう流行には一定の周期があるのかもしれないですね。
本作『シン・デレラ』も基本はそのようなホラー・パロディなのだが、なんというか勢いがあって良かったですね。わりと真面目に『シンデレラ』のストーリーラインを踏襲しているので序盤は退屈というか、ぶっちゃけほとんど寝ていたのだが、その退屈な序盤があったからこそ後半の殺戮ショーはギャップがあって楽しかったような気がする。なんか本作オリジナルの要素として呪いの魔導書みたいなのがあってその本の力でシンデレラは復讐を遂げるのだが、その辺のネタも上手く元の物語とマッチしていたのではないだろうか。繰り返すが序盤は本当に寝ていたのでその魔導書がどういうものなのかはよく分かっていないのだが…。
ま、でもよく分かってないけど確か願いを叶えてあげる代わりにそれが成就したらお前の魂をいただいて魔導書の持ち主的な悪魔の奴隷になってもらうぞ、という感じの典型的な悪魔との契約という感じのものだったと思う(多分)のだが、そのオーソドックスさが良かったなと思いましたよ。本作は全体的に奇を衒ったような感じのものは特になくて、良くも悪くも既視感のあるほのぼのホラーなので安心して観られるB級ホラーでしたね。ゴア表現もそこそこのものでありつつもグロすぎたりはしないというバランス感覚があったように思います。
終盤のお前物理攻撃効くのかよ!? な適当加減とかも実にほのぼの。期待以上になることは決してないだろうが、まぁこんなもんじゃないのという感じで良かったと思います、はい。これくらいの下らなさのB級映画はやはり定期的に観たいなと思いましたね。