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ミッドナイト・ランのtjZeroのネタバレレビュー・内容・結末

ミッドナイト・ラン(1988年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

この映画、幕引きがドラマティックな訳でもないのに、意外なくらいに感動しちゃうんですよ。
あきれてしまう程に、さわやか。
十数回も観ていく内に、その理由がわかってきました…。

主人公はジャック・ウォルシュ(ロバート・デ・ニーロ)。
元警官のバウンティ・ハンター(賞金稼ぎ)で、次の仕事を機に引退し、カフェでも開きたいと思っています。

彼の最後の”獲物”は、”デューク”ことジョナサン・マデューカス(チャールズ・グローディン)。
マフィアの裏金を告発し、命を狙われている経理士です。

ジャックの仕事は、N.Y.在住のデュークをロスの検事局へ、期日までに送り届けること。
空港からひと息に向かうはずが、飛行機恐怖症だというデュークの虚言にだまされ、地上を移動することになります。

さあそこから、鉄道、バス、クルマ、軽トラック、川下り、セスナ機…といった様々な手段を使っての珍道中が始まります。

東から西へとアメリカを横断する大移動の間に、ジャックが警察を辞めざるを得なかった苦い過去や、デュークがマフィアを裏切った事情などが、ふたりの会話から次第に明らかになり、物語にふくらみが出てきます。

前へ前へと進む珍道中と、ふたりの過去を掘り下げるインナートリップとが絡み合って、立体的な厚みが感じられるのです。

加えて、ふたりを追う警察、FBI、マフィア、ライバルの賞金稼ぎ…などが横から介入してきて、ストーリーはさらに重層化し、にぎやかになっていきます。

終盤、無事にL.A.に到着したジャックは、友情がめばえたデュークを解放することを決意します。
ジャックは警察退職記念の腕時計を、デュークは隠し持っていた逃走資金を、互いに贈り合って別れる両者。

そしてラストのラスト、カフェの開店資金を手にしたジャックは意気揚々とタクシーに乗り込もうとしますが、高額紙幣のため断られてしまいます。

ジャックの最後のセリフ「歩くしかないか…」

これが、ものすごく感動的なんですよ。
なぜか?

いろんな交通手段を駆使して、半生をふり返りながら全米を横断してきた彼が、最後の最後にタクシーに乗車拒否されてしまう…という皮肉なオチ。

でもそれが、新たな人生を自分の足で歩いていけ…というジャックへの応援歌に感じられるので、さわやかな感動が残るのです。

そんなこと、セリフではひとことも言ってないですよ。
でも、幕切れからはたしかにエールが感じられる。

だから大好きなんです。この映画。
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