YusakuGodai

ゲームのYusakuGodaiのレビュー・感想・評価

ゲーム(1997年製作の映画)
5.0
映画に登場する銃は、すべて実弾の代わりに火薬が詰められた偽物の銃だ。僕らはそれを本物だと半分思い込むことで、映画を映画として、臨場感を持って楽しむ。嘘を信じることで、映画が映画になる。

『ゲーム』の主人公は、逆に嘘を嘘として見抜かなければならない。偽物の銃を確かにおもちゃだと見抜けなければ、「ゲーム」の外に脱出することができない。この基本設定にすべての鍵がある。

問題は、観客である僕らはどうすればこの映画から抜け出せるのか、ということだ。

嘘を本物として受け取るならば、それは素直に映画の側の要求を呑むことを意味する。小道具の銃をひとまず本物の銃として理解することが、正しく物語を読むということだ。脱出ではなく、むしろ従属。

一方で、嘘を嘘と見抜く態度。実のところ、これも同じだ。発砲をあらかじめ仕掛けられた火薬の爆破ではないかと疑うこと、それは疑心暗鬼の主人公の態度そのものだ。疑い深い観客は、主人公とぴったり意識を重ねる、行儀の良い映画鑑賞者である。

かくして、観客は映画の出口を永遠に失う。いかなる鑑賞態度も映画の手の内であり、映画を出す抜く方策はない。この2時間、何をどう見ようともそこには映画しかなく、その外部は存在しない。
YusakuGodai

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