YusakuGodai

ニューヨーク、アイラブユーのYusakuGodaiのレビュー・感想・評価

4.0
 壮大な世界観を描いた長編『スワロウテイル』の後に、極小の世界を切り取る中編『四月物語』を持ってくるところが、『〈日本製映画〉の読み方 1980-1999』にて森直人(だったか)が「ズルい」と評する、岩井俊二という映画作家の絶妙な「世俗」性のわかりやすい例であるが、それと同じものを、このオムニバス映画におけるたった7分の同監督の短編作品に感じた。
 各国の名だたる監督たちがニューヨークを舞台に描く、様々な愛の群像劇――日本から参加した岩井監督はとびきり甘い物語を描いた。特にラストカットが印象的である。演じているのはれっきとしたアメリカ人でありながら、しかしその演技は、僕の知る限りではあるが、洋画では決して見ることのできない、一種独特の「かわいさ」の演出である。といっても邦画的な演出というわけでもなく、あえて言うならばそれは、アニメや少女漫画的に近い表現、端的にいえば、「萌え」である。
 遠いアメリカという地で、各国の有名監督とともに、ニューヨークの愛を撮る……岩井俊二はそこで、100点満点の「萌え」を演じさせてしまった、日本人ではなく外国人に。それが妙に「世俗」的で、「ズルい」のである。
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