YusakuGodai

ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFTのYusakuGodaiのレビュー・感想・評価

3.4
 コロナ禍による緊急事態宣言の後しばらくして公開され、インターネット上で話題となった(らしい)、重盛さと美feat.友達による 「TOKYO DRIFT FREESTYLE🍜🔥」(https://www.youtube.com/watch?v=1tO5Bifw6U4)。元ネタを検索したらどうやら映画の挿入歌らしく、気になったので映画の方まで見てしまった。それがこの『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』(2006年)、ワイスピシリーズ3作目である。

 レビューを読むと、わりと酷評している人も多いのだが、その主な理由は「適当な日本描写」。高校の食堂で懐石料理っぽい日本食食ってるシーンとか見ると、まあそう言われても仕方ないな、とは思うが個人的にはそこが逆におもしろかった。たぶん作り手側も、まじめに日本的なものを作ろうとしているわけではなくて、むしろ日本っぽい要素を自由にサンプリングしながら異国情緒を楽しんでる節がある。

 とはいえ完全に日本的なものにもなっていなくて、がっつりアメリカ的としか言えないような部分も多い。まず立体駐車場でカーレースとか、まったく日本的じゃない。東京はあんまだだっ広い場所はないから、スラム街の荒廃した道路でレース、みたいなことにはならなくて、そういう意味では日本に合わせてはいるんだけど、それでもやっぱおかしい。だいたい学ラン着た高校生が放課後に車の運転とかしないよ。

 しかし、おかしいっちゃおかしいのだが、でも不思議と、それをスルーしてすんなり見れてしまえる映画であることも、また確かである。ワイスピだから? 僕が思ったのは、観客である僕たち自身が、この映画の作り手と同じように、「軽薄に外国文化を真似する」ことをしてきたからなのではないか、ということだ。映画のテーマ曲「TOKYO DRIFT」はヒップホップだけど、それこそまさに、アメリカ文化のサンプリング。「軽薄」と言ってしまって良いのかはわからないけれど、べつに悪いことでもない。アメリカかぶれの軽いノリが、この映画の多幸感の正体だと思う。

 いま日本でもっともポピュラーなヒップホップ、と言って多くの人が挙げるのがBAD HOPだろう。彼らの代表曲「Kawaaki Drift」(2018年、https://www.youtube.com/watch?v=I4t8Fuk-SCQ)がこの映画を下敷きにしていると気付いたのも、今回実際に映画を鑑賞してみてから。映画全体を覆う、軽薄でアイロニカルな雰囲気と、そのねじれたかっこよさがBAD HOPの根底にあるのだとしたら、日本のヒップホップの見え方も変わってくる。重盛さと美とこの映画のおかげで、新たなヒップホップの文脈にも気付くことができた。
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