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男と女のHKのレビュー・感想・評価

男と女(1966年製作の映画)
3.4
『白い恋人たち』などのクロード・ルルーシュ監督の出世作。パルムドール受賞作品。キャストはアヌーク・エーメ、ジャン=ルイ・トランティニャンなどなど

スタントマンの夫を撮影中の事故で亡くしてしまったスクリプトガールの女性と、奥さんを自殺で亡くしてしまったレーサーの男がいた。二人は共に同じ寄宿学校に自分の子供を預けており、それが縁で一縷の恋に落ちる。

一人の男と、一人の女が出会ってから分かれるまでの過程を淡々と描くストーリーである。彼らの出会いからあまり説明描写などの分かりやすいものは入れずに物語が展開されるために、映画的映画の体裁は保っているためそこはとても良かった。

特に映像面での工夫の入れようがこのシンプルなラブロマンスのストーリーラインの映画により素晴らしいテイストを与えていると思われる。カラーとセピア色のモノクロの画面の独特のショットの使い分けから行われるカット割りがこの映画の一番のキーポイントである。

過去回想の場合はモノクロで撮っているというようなカラーとモノクロの使い分けの明確な意味合いというものは存在しない。話によれば予算関係で仕方なくモノクロにしたらしいのだが、このいい加減のようでセンス抜群のショットの作り方がこの映画の一番の華となっているのである。

そして、何よりもこの映画で必要不可欠な要素はフランシスレイによる音楽である。ダバダバダのスキャットで流れる有名なテーマ曲から織りなされるモンタージュがより叙情的で美しい。

個人的には雪景色の光景や船上での光が差し込む大自然の幻想的な風景などを含めてそのような絵作りがとても良くできていたと思いますね。

クロード・ルルーシュ監督と言えば、オリンピックを題材とした『白い恋人たち』なども名作として挙げられますが、この映画内における耐久レースのために主人公が練習するコースを走るシークエンスもショット割りを使って見事に演出しているのですね。

その撮り方はどちらかと言えばオリンピックの撮影の仕方のようなドキュメンタリータッチで撮っていて、アクション映画的な撮り方は一切していないようにも個人的には見えました。

前述したとおり、この映画での二人の男と女はただ会っただけなのに段々とお互いの心が惹かれていくという所を、典型的な車内での眼の動きなどからも見事に感じ取れることもすごかったと思いますよ。

だからこそ、これだけの名作になったのであろうと思いますね。心に傷を負った男女二人が惹かれあう。普遍的なテーマをここまで普通に描いたのも良かったと思いますよ。

台詞内ではもっとアクション的な要素のある映画しか見ない人たちに対して注意を促すような隠喩のありそうなトランティニャンの台詞もありますしね。「縁起の悪い台詞は使いたくないのだ。」みたいな。

ここまで持ち上げといて悪いんですがね。それでいてなんでこんな点数にしたのかと言うとですね、やっぱり個人的には純粋なラブロマンスは苦手なのでしょうね。

あと、やはり個人的な感想ではありますがフランシスレイのこのスキャットの曲があまりタイプじゃない、好きじゃないというのもあるからなのでしょうね。映画にはこの曲が最適なのでしょうけど、その最適な映画の内容含めて個人的にはあまりタイプじゃないというかね。

まあ、そういう理由で名作でありながらこのような点数にしてしまったのはすいませんね。でも思ったことを正直に感想にした方がやはりいいかなと思ったのでこういう採点にしました。

全体的にも台詞で説明する要素は確かにあまりないのですが、個人的にちょっとノイズになったのは終盤のジャン=ルイ・トランティニャンがアヌーク・エーメに対して抱く好意とか恋愛感情とかをナレーションで説明してしまっている所がちょっと残念でしたね。あそこもナレーションを入れずにジャンの顔だけに焦点を当てたとしても映画としての出来は高くなっていたのかと思いますね。

この映画に対して思ったことはなんか、フランシスレイのプロモーションビデオみたいな作品だなと思いました。新海誠作品とかでもよくやっているような、音楽が全面に出てしまうとやっぱり自分としては?てなってしまうんですよね。

それでも見れて良かったと思います。良い勉強になりました。
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