Melko

ミスター・ノーボディのMelkoのレビュー・感想・評価

ミスター・ノーボディ(1974年製作の映画)
3.7
「今は俺の時代じゃない。お前の時代だ。」

ノーボディってまさかのそっちか!
引退間近の伝説のガンマンと、その熱心なファン(Mr.ノーボディ)が繰り広げる西部劇。

冒頭から緊張感溢れる描写。
髭剃り屋店主と息子を縛り上げ、ミルク泥棒をしようとする悪漢3人。そこへフラッと入ってくるロートルガンマン、ボーレガード。息詰まる攻防の後、目にも止まらぬ早撃ちで撃退。追われる身の上に疲れた彼は、老眼鏡を掛け逃亡の算段中。道すがら、自分の戦歴にやたら詳しい謎の青年ノーボディ(日本語で言う、名無し?)と知り合う。

「引退したい」と言ってる老人に、「いや、150人と撃ち合って伝説残すべきだ!」と熱く語り、ボーレガードにつきまとうノーボディ。
何言ってんだこいつ?引退したいっつってんだから、黙って引退させてやりなさいよ!しつこいよ!
ってずっと思ってた。
不思議なことに、自らは手を下さない。
あくまで、話題になるようにド派手な最期をボーレガードに用意したいと曰う。
ハメられたボーレガードが諦めたように150人と向かい合う終盤の撃ち合いは、あんなにたくさん馬と人を用意しておきながらまさかの止め絵で少し残念。それでも、ブワッと引き画になり、ボーレガードvsワイルドバンチの構図になるところは圧巻だったが。

西部劇なのに、
「フ〜ッ!」と言う掛け声と共に、明るく陽気なBGMから始まり、ちょっと拍子抜け。立ち回りはカッコいいんだけど、コメディが見え隠れ。
早撃ちも銃撃も体術も、果てはジャッキー的な、モノを使ったアクションまで、やたらめったら強いノーボディ。
何を考えてるのか、真意がわからないノーボディ。
脱力系のお笑い芸人かのような独特の話術と立ち回りのノーボディ。ミラーハウスでの戦いは…これ笑っていいところ?
そんな彼に、百戦錬磨のいぶし銀ボーレガードは最後まで振り回されっぱなし。

ただ、どうしてノーボディが頑なにボーレガードとワイルドバンチと向き合わせようとし、おまけに自分と決闘までさせたのか、それはラストでわかる。
あぁ…なるほど…これが粋というやつか?
それにしてはちょっとだけボーレガードの語りが長すぎた気もするが。
でも、ラストシーンが冒頭のシーンと同じシチュエーションだったのにはニンマリ。
ただそこはノーボディだなぁ。お下品…
指はヤダ〜笑

古き良き、壮大なロケーションで馬を走らせる爽快感。明るい音楽と底抜けに明るい主人公で、ちょっと不思議な西部劇。
Melko

Melko