滝和也

関東緋桜一家の滝和也のレビュー・感想・評価

関東緋桜一家(1972年製作の映画)
3.8
艶かさ、儚さ、可愛げ
狭気、鉄火肌。
その全てを持つ
東映任侠路線に鮮やかに
大輪の華を咲かせた
希代の女優…藤純子
引退記念作!

「関東緋桜一家」

緋牡丹博徒、女渡世人、日本女侠伝の人気主演シリーズそして日本侠客伝、昭和残侠伝等のヒロイン役、東映任侠路線に咲いた一輪の華、藤純子様が当時、尾上菊五郎(現在)との結婚で引退する事から作られた記念作品。

彼女の各シリーズへの貢献度の高さは半端なく、当然の如く空前のオールスター映画になってます。高倉健、鶴田浩二、菅原文太、片岡千恵蔵、嵐勘十郎、若山富三郎、待田京介他出るわ出るわ…。皆さん藤純子さんのためなら是非と言う感じだったんでしょう。(池部良さんくらいかないないのは…まぁ東宝の役者さんですし、残侠伝だけかな貸出は。)

東映はオールスター作品を盆暮れに固めて作ってましたから、お手の物だったんでしょうが、流石に凄すぎ…。各スターに見せ場を用意してても、流石に薄味になりますよね。確かにもっと藤純子様へのフューチャーがあってもとは思いますが…その役柄は今まで演じてきた全部乗せですからまぁ…(笑)

とは言え、ストーリーが破綻しているかと言えばそんな事はなく、良くぞまとめたと言う展開です。名匠マキノ雅弘の手腕が光りますね。定番の我慢劇にキラ星の様なスターを巧みに配置して成立させてます。※人は入りましたが確かに内輪で一悶着あったみたいですね…。

定番の我慢劇と書きましたが確かに凄いストーリーではありません。ただ…先に書いたように今までのキャラ全部のせ。美人芸者役から火消しの棟梁になり、鉄火肌だけど、心を寄せ合う健さんの前では白痴的な可愛げある女。舞いを舞うし、賭場では鶴田浩二と女侠並に渡り合う。更に若山富三郎の弟子で北辰一刀流の使い手で敵を切るは槍は使うわ、簪を手裏剣代わりに使うってもうスーパーレディ(笑)藤純子さんの魅力全部ぶっ込んだキャラクターなので最後のファンサービスですよね。

これに高倉健、鶴田浩二、菅原文太、若山富三郎が出てくるので誰が最後に一緒に殴り込みに行くのかわからない。白波五人衆なみに5人で突っ込むかと…(笑)流石にそれはないんですが、戦隊ものの東映ならやりかねないかと期待してしまいました。そこはまぁ健さんと鶴田浩二さんが支えます(^^)ので満足ですが。

因みに梨園に嫁に行くので、歌舞伎は松竹な訳です。その絡みからか、松竹新喜劇から藤山寛美も客演してます。悪役も天津敏さん、八名信夫さんがいて定番の方々。天津さんは緋牡丹博徒の宿敵ですから、今回ナンバー2で天然理心流抜刀術の使い手で強敵設定。中々見応えありますね。

片岡千恵蔵、嵐勘十郎と御大方も藤純子様の見送りにでてますが、片岡千恵蔵さんが僕は好きなんですよね。江戸を斬るの遠山金四郎の父役がガキの頃の印象に残っていて。今作もかなり良い役です。ラストのカーテンコールの様なシーンを演出しますからね。

その演出の素晴らしさは言葉にできない程で、なんてハッピーエンドだと。東映任侠路線の華から女、藤純子へ変わる、素晴らしいラストです。

一時代を築いた東映任侠路線も藤純子さんの引退で終焉を迎えたそうです。藤純子さんの演技復活はあ・うんまでお預けになります。今も健在で素晴らしい演技を見せてくれていますね。また新作も見たいところです(^^)

追記 ただ…この東映の次の人気シリーズはそう、仁義なき戦い。東映はまた復活します。こちらもレビューいずれします。
滝和也

滝和也