KouheiNakamura

ブラッドシンプル ザ・スリラーのKouheiNakamuraのレビュー・感想・評価

4.2
わたしは悪くない。


今や世界中の映画賞の常連監督、コーエン兄弟。その衝撃の監督デビュー作。正確に言うと2000年に監督自らが編集し直した短縮版なのだが、オリジナル版はVHSでしか見られないので今回はこちらのバージョンで評させていただきます。

デビュー作ゆえの青臭さは微塵もない、洗練された一本。後のコーエン兄弟監督作品を彷彿とさせる部分も多数。登場人物のささいな欲が大変な事態に発展するのはファーゴ、執拗なクローズアップで不安を煽るのはバートン・フィンク、大胆なカメラワークは赤ちゃん泥棒、光と陰を巧みに使った映像はノーカントリー、50年代フィルム・ノワールのような展開はミラーズ・クロッシング…ととにかくてんこ盛り。それでいながら上映時間は92分とタイトで余計な説明台詞もなし。
冒頭の暗い車内で男女が会話する内容だけで二人の関係性を匂わせるなど、とにかく映画らしい風格を漂わせる。唐突な暴力描写も効果的で、物語を一気にドライブさせてくれる。

原石であるにもかかわらず、とにかく磨かれまくっているエッジの効いた秀作。おすすめです。
KouheiNakamura

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