KouheiNakamura

シン・エヴァンゲリオン劇場版のKouheiNakamuraのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

シンなる物語


この映画の話をする前に、僕とエヴァについて少し話す。
なぜならこれを話さないと、本題には入れない。
シンエヴァは、そういう映画だから。

1995年、TVアニメ新世紀エヴァンゲリオン放送開始の年。
当時の僕は6歳。物心つき始めたぐらいの子供が思春期の少年少女を主役にしたロボットアニメに惹かれることはなかった。
夕方になんだかちょっと怖いアニメをやってるな、とかそれぐらいの認識だったと思う。
もちろんその後に公開された劇場版「シト新生」も「Air/まごころを、君に」もスルー。
そんな僕が初めてエヴァを認識したのは、2003年。
当時完全なゲームっ子だった僕が初めて触れたのが、PS2用ソフト「新世紀エヴァンゲリオン2」だった。(ちなみにこの年、僕は中学2年生。奇しくもシンジたちとは同世代だ)
TVアニメ、更には劇場版までの内容を総括し、オリジナルな展開も多数含まれたこのゲームとの出会いが僕とエヴァの初邂逅だった。
正直なところ、エヴァンゲリオンのあらすじは大体このゲームで知った。(ファンからするととんでもない邪道だが)
とはいえ、この時点でも僕は決してエヴァにハマったとは言えなかった。
その証拠に、学生時代にちゃんとTVシリーズと劇場版を見たことはない。
僕は、一番多感な時期にまともにエヴァに触れたことはない。
これは、今思うと大変悔やまれることではある。

そんな僕が再びエヴァと向き合うことになったのは、2012年。
「エヴァンゲリヲン 新劇場版:Q」。
当時の僕は今以上に映画を劇場で観まくっており、劇場で公開している作品ならとにかく手当たり次第に何でも見ていた。
エヴァが新劇場版と称して、再び物語を語りなおそうとしているのは知っていた。
新劇場版:序も、破も未見だったがゲームで大まかな筋は知っている。
よし、Q行ったれ!と劇場へ向かった。(今考えるととんでもない蛮勇だ)
2時間後、僕の頭の中は文字通り?でいっぱいになった。
「…僕の知ってるエヴァじゃない!」
「なんじゃこれ、なんで14年も経ってるの?」
「謎ばっかり増えて、話進んでなくない?」
「あれ、エヴァって思ったより面白くない…?のか?」
当時の僕のエヴァQへの感想は、散々である。
門外漢のくせにいきなり上級者向けコースを選んだも同然なのだから、当然といえば当然の反応なのだが。
そうして僕の興味はまたエヴァから離れ、とうとうシン・エヴァ公開が迫った2020年まで時間が流れてしまう。

エヴァファンすらも混乱の渦に巻き込んだ問題作Qから待つこと、なんと8年。
やっと、やっと新劇場版シリーズの完結編が公開へ…とのニュースを見た僕は、いい加減エヴァをちゃんと予習するべきだと決意しました。
まずはTVシリーズ全26話の鑑賞。(あ、前半は割と普通に熱い場面も多いんだ…とか後半はやっぱり負のオーラが凄いな…等の感想を持った)
続いて旧劇場版「Air/まごころを、君に」を鑑賞。(アクション凄まじい…しかし無残、無情の地獄絵巻。さらに後半の超展開にぶっ飛ばされた)
更に新劇場版:序(めっちゃ丁寧なリブートやん…)、破(面白い!面白い!)、そして再びのQ(あれ、こんなに面白かったっけ…以前よりもずっと飲み込みやすいしグッとくる…!)。
そうして、やっとこさこの「シン・エヴァンゲリオン」にたどり着いた。

前置きが信じられないぐらい長くなってしまった…。
ここから、ようやく本編。今回のシンエヴァの話になります。ネタバレ全開です。

開始15分後ぐらい、ケイスケの声が聞こえた瞬間に僕はこう思いました。
「あ、この映画は大丈夫だな。きっと満足できるものになるな。」と。
そこから第三村のパートに入り、Qで受けたあまりに深い傷をゆっくりゆっくり癒し己と向き合うシンジ君を見て、改めて思いました。
「ああ、今回でエヴァは終わる。それも、誰もが納得できる形で」
その予感は、綾波(仮称)が人間性を獲得しその別離を惜しむ場面で確信に変わりました。
後半のヤマト作戦以降、その複雑な展開と膨大な難解台詞の嵐に振り回されることはあっても振り落とされることがなかったのはやはり前半部分の力が大きい。
シンジやエヴァに捉われた全ての人には、帰るべき現実のセカイがある。それは決して虚構と相反するものではなくむしろ隣接するものである。それを雄弁に物語ってみせた前半部分があるおかげで、いつものエヴァらしい難解さもすんなり心に落ちてくる感覚があった。
そして迎える、シンジによる補完計画の終わりと新世紀の創生…本当に終わるんだな、という実感と高揚と寂しさがないまぜになり何とも言えない気持ちでエンドロールを眺めていました。

既に多くの方が言及されている通り、今回のシンエヴァは新劇場版の総決算であるだけでなく、TVシリーズや旧劇場版や漫画版や更にはパチスロ(!)まで、今まで世に出たエヴァンゲリオンという作品のすべてを総括してみせる作品でしたね。
各キャラクターの迎える結末には賛否両論があるかとは思いますが、割とどのキャラクターもはっきりこうなりました!と断言するような描き方にはなっていないあたりがまたニクい。
エヴァは終わるけれど、なかったことにはならない。これからはどんな想像を働かせてもいい、自由なセカイになった。僕はあのラストをそう解釈しています。
個人的名シーンを挙げるなら、やはりアスカとシンジの例の浜辺でのシーンですかね…あの絵面だけでも最高なのに、あそこでシンジがアスカにかける言葉がもう…堪らなかったです。

なんとも混乱した、まとまりのない文章になってしまいましたがこの鑑賞後のライブ感含めてエヴァなのかな…なんて。
にわかエヴァ好きではありますが、ちゃんと全編見て良かった。
心からそう思える完結編でした。
最後に一番好きなエヴァの主題歌からの引用で締めたいと思います。

”もう二度と会えない、なんて信じられない
まだ何も伝えてない
まだ何も伝えてない”
KouheiNakamura

KouheiNakamura