KouheiNakamura

忍びの国のKouheiNakamuraのレビュー・感想・評価

忍びの国(2017年製作の映画)
1.5
トンデモ忍者 無門くん。


「のぼうの城」などで知られる和田竜原作の小説を「殿、利息でござる!」の中村義洋監督が実写化。主役の伊賀忍者・無門を嵐の大野智が演じるほか、鈴木亮平、石原さとみ、伊勢谷友介らが脇を固める忍者活劇。

中村義洋監督の作品は何本か観ているが、個人的には当たり外れの激しい監督だという印象。前作「殿、利息でござる!」は中々に良くできた時代劇だったが、「映画 怪物くん」などは酷い出来だった。そんな中、この忍びの国は怪物くん以来の大野智とのタッグ。
結果は…残念ながら、今回は個人的に大外れだった。

まずは冒頭。伊賀の忍び同士の小競り合いが描かれるのだが…この時点で既に不安になる。タイトルを出すタイミングがあまりにも妙で拍子抜けするし、どの登場人物に焦点を当てたいのか?何だかフワフワしたまま、物語が幕を開ける。
そこから、伊賀の忍びたちがなぜ虎狼の輩と呼ばれているかを文字通り「説明」する場面が続く。無門はろくにキャラクターも描かれないまま、嫁とのくだらないやりとりばかりピックアップされる。
忍びたちと対比させたいであろう、織田家の描写がまた酷い。伊勢谷友介演じる日置大膳が主君に対して無礼すぎて、リアリティがない。何よりも知念侑李演じる織田信雄のバカ殿ぶりが酷すぎる。これは演じた俳優の力量のせいかもしれないが、合戦の場にノコノコ出てきた時の姿は馬に乗った農民にしか見えないぐらいに貧相だった。華も貫禄もゼロ。そういう役だと言われればそれまでだが、それにしても魅力のない殿様だった。

もちろん良いところもある。鈴木亮平演じる平山平兵衛は存在感から声の張り方、アクションも素晴らしかった。殺陣の場面は総じて良かった。CGによるおちゃらけ戦闘シーンをのぞけば、だが…。

しかし、そうした良点を全て帳消しにするのがラストの陳腐かつ唐突な現代社会へのメッセージとクライマックスの呆れるしかしないある展開。原作ではもう少しまともに描かれているのかとも思ったが、脚本を原作者の和田竜が書いているのでおそらく大枠は同じかと思われる。

忍者を金に汚いやつら、とした発想はいいもののいかんせんアウトサイダーとしての魅力に欠けるのは監督の力量か原作者の手腕か。いずれにせよ、何とも盛り上がらない映画だった。オススメしません。
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