KouheiNakamura

パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊のKouheiNakamuraのレビュー・感想・評価

3.8
帰ってきたヨッパライ。


大ヒット海賊アドベンチャー映画シリーズの第5作目。自由を愛する海賊ジャック・スパロウと彼の命を狙う海の死神サラザールとの闘いと、父親の呪いを解こうとする青年ヘンリーの物語が並行して描かれる。
監督は「コン・ティキ」のヨアヒム・ローリングとエスペン・サンドリム。ジョニー・デップ、オーランド・ブルーム、ジェフリー・ラッシュらお馴染みのメンバーに加えブレントン・スウェイツ、カヤ・スコデラリオ、ハビエル・バルデムら新キャストが華を添えている。


正直なところ、このシリーズには大した思い入れはない。一作目は痛快なエンタメとして楽しみ、二作目はバランスが悪いながらも手を替え品を替えて展開するドタバタ感は嫌いじゃなかった。キツかったのが三作目のワールドエンド。話があっちに行ったりこっちに行ったり、無駄に複雑だし3時間近い上映時間は明らかに冗長で退屈だった。四作目はシリーズの仕切り直しを図ったが、今までトリックスター的役割だったジャック・スパロウを主人公にしてしまったために妙に薄味な作品となっていた。
こんな調子なので、正直今作にも大した期待はしていなかった。シリーズを無理に続ける意義はもうないのではないか?そんな風に思っていた。

しかし、意外や意外。今作は中々面白かった。相変わらずジャック・スパロウはおちゃらけているが、今作では一作目のようなトリックスター的役割に戻っていて好感が持てた。メインのストーリーの周りをチョロチョロしては事態をややこしくし、終わってみるとジャックは大したことはしてない。でも、それでいいのだ。ジャック・スパロウは自由を愛する男。自由な男に物語を転がす主役は似合わない。
今回の実質的な主役はヘンリー・ターナー。三作目以来久々の登場となる、呪われたウィル・ターナーの息子である。父親を救いたいという純粋な思いが物語を動かしていく。彼と美しき天文学者カリーナ・スミスとの仄かなロマンスも見ものだ。
お馴染みバルボッサ船長のずる賢さ、死神サラザールの恐ろしさも映画を生き生きとしたものにしている。

シリーズファンにとっては三作目以来ずっとモヤモヤしていたあの件が解決するのも嬉しいサプライズ。
シンプルなストーリー、大らかで楽しいアクション、意外なドラマ…と中々に盛りだくさんな快作。おすすめです。
KouheiNakamura

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