藤原直樹

クローサーの藤原直樹のレビュー・感想・評価

クローサー(2004年製作の映画)
3.5
「卒業」で知られるマイク・ニコルズが手掛けた大人向けラブストーリー。
クライヴ・オーウェン、ジュリア・ロバーツ、ジュード・ロウ、ナタリー・ポートマンら豪華キャストの見事なアンサンブル。

一筋縄ではいかない大人の恋愛事情。
都会的で傷つきやすくて不誠実。
彼らは皆ひどく孤独で、満たされない"何か"を求め続ける。
登場人物の行動も言動も全てが身勝手で、、、相手に振り回されて相手を振り回しての繰り返し。
それでも愛を求めて裏切ったり裏切られたり、、、どうしようもないほど憐れ。
結局最後まで彼らに感情移入することは出来なかった。
男女の恋愛関係がどれだけ面倒なものなのかはよくわかったけども。
役者の演技は良いけどキャラクターに問題がある。
ただ、意図的に感情移入させないようにしたということも考えられる。
客観的な視点でこの物語を見つめて欲しかった?

本作はあくまで会話を重要視しているようで、ワンシーンワンシーンは長いし(カットは何度か割るけどシーンは継続する)セリフも長い。
印象深いダイアローグもあるが視覚的な動きが少ないのでどうしても退屈になりがち。
彼らの言葉にならない感情は演者の微妙な演技と緻密に配置されたミザンセヌによって代弁される。
画面の構成なども随所にこだわりが見える。
特にオープニングとラストが印象的。
ジュード・ロウとナタリー・ポートマンが人混みの中を互いに歩いている姿をスローで捉えるオープニング。
ナタリー・ポートマンが一人で人混みを歩くラスト。
挿入歌はどちらも同じである(なかなかの名曲)。
この二つのシーンのナタリー・ポートマンの表情は同じに見える。
髪型も服装も違うが表情は同じに見える。
だが実際は感情的な変化があったわけで、つまりその表情の裏に本当の自分を隠し込んでいるのかもしれない。
あるいは全て吹っ切れたような表情にも見える。
オープニングとは違い、すれ違う男たちは彼女の美貌に振り向いてニヤニヤしている。
だけど彼女は孤独なのだ。
人々が溢れる中で絶対的孤独なのだ。

甘くない、ひたすら苦いだけのラブストーリー。
不誠実で嘘つき、人間なんてそんなものなのだろうか?
藤原直樹

藤原直樹