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セックスと嘘とビデオテープのAirconのレビュー・感想・評価

3.7
89年のパルムドール。スティーヴン・ソダーバーグ。
テーマは普遍的なことだけどなんかシブい。

4人の人間の「個」と「関係」の構造。
幾何学的な感じ。
「個」と「関係」はレイヤーの違う概念で、「個」が2つ以上のときにそれを結ぶ「関係」という概念が「自動発生」して、その「関係」自体にも問題が生じるシステム。
「個」と「関係」は独立ではなくて相互作用があり、「個の問題の原因」が「関係の問題」だったり、「関係の問題の原因」が「個の問題」だったりする。

シンシアはアンの男を寝取って勝った気になってる。
ジョンはグレアムの女を寝取って勝った気になってる。
アンとシンシア、ジョンとグレアムの一方的なバチバチがあって、ジョンとシンシアは寝取り上等で似てる、グレアムとアンは奥手で似てる。

また、その「自動発生」という概念にも触れているのが良い。
グレアムは「関係」を発生させないように慎重に振舞っていた、それをジョンは変わったと驚いたのだけど、アンはそんなグレアムの行動でも大きく影響を受けたと、そのグレアムが抗おうとした「自動発生」という関係の在り方があらためて「そういうもの」として描かれる。

グ「人間が変わった、良くないところを直したと思っている。自分にとって重要な人のまま、そしてその彼女にわかってもらいたい。変わったことを。」
ア「いや、全然だめでしょ、変なビデオ録ってて、何で満足してるの?」
グ「こうなるに至った僕の人生を君に話して君がそれを理解できると言うのか?自分自身わからないことだらけなのに。なぜ話さなければならない。」
ア「あなたを助けたいから。あなたの問題を。」
グ「君たち(3人)より僕の方が正常だ。」
ア「あなたも病気よ。」
グ「でも君には関係ない。」
ア「いいえ関係ある、あなたに影響を受けた。あなたは私の人生を変えた。」
グ「そんなつもりでは、そういうことがないように変わったのに。。。」

定住も拒絶し、人との関わりを最小限に抑えようとしている彼は質問をしてそれをビデオに録るだけ。
影響を与えないと思っているが、それでも十分に影響を与えてしまう。

グレアムはエリザベスとの「関係」に苦しんで自分という「個」を変えようと思った。
(割と未練たらたら系で街へ戻ってきたっぽい、ということがわかりにくい)
だけどグレアムが思っていたような「関係」ではそもそも無かったことがジョンから明かされる。
だからグレアムはアンとの「関係」の構築、「個」の再生に向かえる。

割とよくある物語の構造だけど、ハマってない「関係」の状態を一旦シャッフルしてしっかりとハマる関係になる、「マッチングの不一致の問題」が解消される、スカムが放逐される、という解決感はある。
関係の問題は組み合わせ問題で解決する。あと正しい情報。



この「個」と「関係」から物語が始まる構造、なんとなく演劇っぽいのかな。
最近見たマクドナーの『In Bruges』、パルムドールの『雪の轍』とかもそういう構造がまず作られていた。
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