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終わらない週末のAirconのネタバレレビュー・内容・結末

終わらない週末(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ホラー(恐怖)とは定義的にこういうことなのでは?
これはネタバレ厳禁なので前情報なしで。
わりと体験型。
音声が、360度パンや距離感が配置されてる感。

なぜホラーがこんなに嫌いなのにすごく惹かれるのかは、おそらく幼少期にドラえもんの「ナゾの予言書」という回を観て、本当に怖くて嫌だったのに、スペシャルの一話目だったせいで何度も観てしまい(飛ばすことも多かったが)、変な癖が脳の神経回路に残ってるせいなのかもしれない、と、これを観て思い出した。
あのゾワゾワ感再び。

「実は全部関係ないことでした」というネタばらしが欲しい。
すべてをひっくり返して説明してくれるオチを提示して終わってほしかった。(映画的にではなく願望)
まあこの強度で現実に起きちゃってると、「ドッキリでした」ですらも無理なレベルだけど。
「きっかけはただの停電でした」っていうそこからパニックや噂に尾ひれがついて、善意の自警団や情報共有者の行動で大変なことになったという”オチ”でも良かった。

つまり、この終わり方は夢オチ並に自由で突き放してるので、その「全部夢でした」で終わっていった時のさびしい感じはある。
あのスペイン語で訴えかけてきた女性とか、何もネタバラシなしかー、とか。。
「なにもわからないまま」。


まあ本筋としては、ネタばらしが無かっただけで、最後の方にGHが語った「クーデターや内戦を起きやすくする」人々の疑心暗鬼を利用した「きっかけはただの停電でした」に近いやり方にまんまとハマった説が強い。
確かにダニーとジョージも始めちゃいそうだった。
それと同じ構造。
「これから何が起きるかわからないので」助け合いを拒否する、という行動に合理性が出てくる。

NYCではキノコ雲が、ホワイトハウスでも放射線が検出されているのかもしれない、それは外国が攻めてきたのか、なんなのか。
動物たちも明らかにおかしな行動をしている。
さすがにひっくり返らない強度。
「なにかはおきている」。


「テクノロジーに頼りすぎて、無くなると何もできなくなる」という描写がある。
自動運転車が制御不能になっているのとか象徴的。

これが、我々が疑心暗鬼に陥り、助け合いを拒否し、自己責任で自分だけ生き残ろうとする、そのために人を殺す、までの経路が開くポイントになっているんだと思う。
たしか『ボーダーライン2』でもあった論点、スマホだよりになりすぎて、スマホが使えなくなった時に詰む。

これが宙ぶらりん感を生み、リスク評価が本来なら20~50あたりで済む出来事でも、0~100まで考えられる状態を作り出す。
そこには、この映画で「もしかしたら本当は全部ドッキリなのでは?」と考えられることと同じように、「0」つまりなんてことない可能性まで含まれる。
もう0~100まで全部の可能性がある状態になってしまう。
そうすると、無難に100に備えるのが合理的な行動になる。

必然的にダニーとジョージの「おっぱじめそうな状態」は「宙ぶらりん感」から発生することがわかるし、その「宙ぶらりん感」=「0~100まであり得てしまう状態」がこの映画を観ている間にあじわう感覚でもある。
「なにかはおきている」が「なにもわからないまま」終わるのは、そういう状態の不安定さを体験させる効果がある。
実際にスマホが使えなくなった時のあなた、みたいな。
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