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コヴェナント/約束の救出のAirconのネタバレレビュー・内容・結末

コヴェナント/約束の救出(2023年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

イラク・アフガンが舞台の戦争映画は緊張感がすごい。

「現地の通訳」という要素は、大きく捉えれば「バディもの」の、不信感や馬が合わない等の不仲状態から信頼関係構築までのドラマを、「被アンダーカバー」的な緊張感、答え合わせ等のイベントを通して描ける良い題材。
その状態から後半は、命をかけての相棒のためにとてつもない行動、それに相棒も命をかけて借りを返そうとする。

蓋を開けてみれば「一般名でアーメッド」みたいな話だった。
親戚とか知り合いとか危険に晒されると言い出したらキリがないけど、そういう危険を冒して通訳をやってくれた現地の協力者アーメッドは少なくとも救わないといけないと思える。
撤収だけではなく。
「アーメッドに恩があるから助けに行かなくては」と言う話がマクロの相似形になっている。




『アメリカン・スナイパー』『ハート・ロッカー』と比較してしまうと、説明が足りなかったり都合がよかったり、「抜け」があると思った。
とくに「動機」だとか「気持ち」の部分には足りないと思うことが多い。
主人公ジョンキンリーの描写も、内面の複雑さがなく、疑い→感謝→助ける!のシンプルな印象。

ガイリッチー、『キャッシュトラック』を観ていても思ったけど、意外と脚本に難がある人なのかな。
『ロックストック』とか『スナッチ』を観てたときは、とにかく面白かった印象、脚本がすごい緻密だった印象しかないのだけど。


アーメッドの強い動機、彼を助けるためにここまでやってくれるのはなぜか。
そこもとくに何も描写は無く、家族のためなのか、だけど家族も相当な危険に晒してしまう仕事ではあるし、帰路の献身ぶりは成り行きにしては綺麗すぎる気も。
「もう限界が来てしまい、置いていけば助かる、置いていこうとするが、どうしてもかわいそうになってしまい」、みたいなシーンが少しくらいあってもいい。
今回は、本当に本気の綺麗な善人だったんだけど、その場合だとキンリーは「助けてもらってる時の映像を思い出す」くらいではなんか足りない気が。
ちょっとびっくりするくらいの善人なのにびっくりが足りない。
(イーストウッドもよくやる感じの、善や悪を比較的はっきり規定する、マダラにしない、その上に「かわいそう」を作る。
「納得感」は強いが「現実感の説得力」が多少犠牲になって、少しフィクションっぽく見えてしまう構造。)


理不尽な扱いがあったら、そこも拾わないと謎が残る。
何故アーメッドはあの直後に保護してもらえなかったのか。
軍は何してたの?
すぐに保護、もしくは拘束でもしなかったの?
ビザが発行されない?
軍でやってくれないの?
こういう時のために協力者はせめてすぐに保護できるようにしておいて、すぐに米国に脱出できるようになってないの?
いろいろ謎。。。
本当にそんなグダグダなら「そういう状態だ」という描写でもっと問題提起する形にした方が良い。
描写が無くて謎なままは一番よくない。


観ていて最初は、アフガンの人たちに裏切り者扱いされるのがツラかったけど、本人たちはどう感じてるんだろう。
「タリバンは良くないから米軍に協力するんだ!」と強い意志で、裏切り者扱いされる仕事をしているのか。
さらにタリバン以外の人はどう思ってるのか。
今回はタリバンに非協力的な一般人が多かったけど、一般的な彼らのポジションはわからない。
村内では普通どう思われるのかとか。
なかなかそこの通訳たちの気持ちは微妙なものだと思うけど、やらなかったな。


ハーディは唐突に仲間にいた?と仲間関連の描写。
これは気持ちの話ではなく、どういう意図の演出、編集なのか、少し意味不明だった。
直前に、エディが実はアフガンたちの言葉がわかるということでキンリーにファラージが何を言っていたか教えてくれるので、流れ的にそいつが逆に裏切り者だったのかと思ったら、同じ髭でもハーディは結構なアフガン系でエディではなかった。
エディはいつものキャップ被って銃構えてた。
ハーディ?どれ?となってしまったけど、新キャラ?

スティーブカーシャーも、新人と印象付けて、メルシーとか言ってたくせに何もなし。
(あのやり取りは、名前的にボナペティっぽいとか、メルシーっぽいとかなのかな。)
とにかく何もなし。
メンバーを印象付けようとしているようで、ハーディの様な全然印象付けされていなかったメンバーがフォーカスされたり。。。
他のJJとかも「大切な仲間」が失われた大ピンチ感は出てるけど、思い入れはそんなでもない。
まだブライアン・デ・パルマの『M:I』の最初のほうが思い入れはあった。


突然出してきた切り札「8年前の借り」はもうちょっとなんか無かったのか。
インスタントすぎないか。

ジョンキンリーならすぐやってくれるのかよ、、もなんだか。。。
それがわからなかったり、なぜ誤解が生まれたのか、想像で補完することはできるが必然性を持っていたとわかる描写が欲しい。

エンジェルオブデスあざす。




ガイリッチーの新機軸、緊張感あったし、感情にも訴えかけてきたけど、大きく話はできていたが、よくよく考えるとシンプルだったり細部が雑だったりした印象。
社会派的には、映画の内容での「とてつもない恩がある→助けたい」という流れは当然納得できるが、「とてつもない恩があるから」という動機は逆に危険な気もしなくもない。
ほとんどの人はあそこまでの経験は無いだろうし中にはヤなヤツもいるだろうけど、米国が約束を反故にしているならば、「条件なしに」ちゃんと受け入れてあげないといけないのでは?と思うので。
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