復讐などしてはいけないのは当然だが、それは一言で簡単に言い切れるものではない。それがじっくりと描かれる。
無実の罪で長年服役、生まれたばかりの子どもとも引き離され、20歳にして人生がめちゃくちゃになった女。刑だけでなく、社会からも凄まじいバッシングを受けた。
それと、子どもをなぶり殺された親たちもまた物語の軸。自分よりも大切なものを奪われたら、神すら怖くなくなるのかも知れない。
この彼らが絶妙な演技、表情。多分みなそれなりの役者さんなんだろう。みんなで相談しても即座には一丸とならないところもリアル。
韓国はキリスト教徒が多い国でそのようなモチーフもあるが、それに背を向けるような選択をした人たち。そもそも伝道師役がなんとも頼りない感じがする。
子どもが泣き叫ぶ映像を見た後で、宜しければ今すぐ復讐できますよと言われたら、その時の高まった感情であの選択をしたくなる気持ちも分かる。
クムジャは結局それでも満たされなかった。遺族たちだって果たしてその後すっきりと生きられたかどうか。自らの手まで汚させられるという第二の被害を進んでこうむった。
白いものを食べただけ清くなれるなら苦労はない。しかし豆腐にでもすがりたい気持ちになるというのも少し理解できた。