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スターリングラードのHKのレビュー・感想・評価

スターリングラード(2000年製作の映画)
3.5
『愛人/ラマン』などのジャン=ジャック・アノー監督による戦争映画。キャストはジュード・ロウ、ジョセフ・ファインズ、レイチェル・ワイズなどなど

1942年、ドイツとソ連はスターリングラードで激戦を繰り広げていた。ウラルの羊飼いで幼い頃から祖父から狼の狙撃などを仕込まれていた一兵卒の兵隊が弾持ちとして前線に送られるもソ連軍の一気呵成の攻めを食らい万事休すだった。しかし…

1993年に公開された戦争映画と同じ邦題で(原題はenemy at the gates)、作品の舞台もスターリングラードという点で同じである以上、両作品を比べざるを得ないというような気がします。

戦争の悲惨さと地獄絵図をものの見事に描き切った93年版スターリングラードとは違い、こちらはジュード・ロウとエド・ハリスによるスナイパー合戦の英雄譚のようになっている。

私の大好きな岡本喜八監督で例えるのであれば93年版が『沖縄決戦』だとすればこの作品は『独立愚連隊』と称した方がよいかもしれませんね。アメリカ映画らしくエンターテインメントに振り切れているのが良かったと思います。

特に建物の構造やマネキンを巧みに利用したタクティカルによる攻防戦は非常に見応えのある作劇であったと思います。また、93年版に比べると悲惨さは軽減しているものの、序盤のスツーカによる空襲や建物での空襲など所々ド迫力のシーンはあった。

英雄譚やプロバガンダの犠牲に主人公が仕立て上げられ、次第にそれが泊らなくなってしまう群集心理の恐ろしさというのもしっかりとやろうとしていたの良かったと思う。

エド・ハリス演じるソ連側のスナイパーの非情さも過剰に描かずにしかし冷酷に描いてるのはとても良かった。サーシャを首吊りにさせたりするなど、所々非情さが出ているのが良かったですね。

でもやっぱりこの映画をこんな点数にしてしまったのには理由がありましてね。低い方でしょ。よきゃ3.8ぐらい普通に上げますよ。

やっぱり戦争映画なのに最終的に陳腐な三角関係の色恋沙汰に収束してしまったのが残念ですね。レイチェル・ワイズは確かにエロいですよ。でも戦争映画にそういうの要らね。

最終的にはジュード・ロウとレイチェル・ワイズのセックスをこの映画で拝む始末。非情さが掻き消されてしまう所が残念。赤い天使みたいにその後に絶望が待っているのなら別に良いのですがね。

そして個人的にはバッドエンドに見えずにハッピーエンドみたいな余韻残して終わらせてしまうのも気に食わない。なんであそこでレイチェル・ワイズ殺さなかったん?

もういい所までは戦争映画とかっこいい戦争アクションやってたのに、最後にこんな形で収束してしまうのが残念ですね。気持ち悪くて仕方ないですよ。

それでも見れて良かったと思います。でもこれを見るなら同名のスターリングラード93年版のがお勧め。
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