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BATON バトンのtetsuのレビュー・感想・評価

BATON バトン(2009年製作の映画)
3.5
岩井俊二祭りということで、脚本を手掛けた本作を鑑賞。


[あらすじ]

舞台は近未来。
人型ロボットのアポロとミカルは、惑星の探索中に、謎のロボットを発見。
メモリデータを読み込んだアポロが、ウイルスに感染してしまったことで、追われる身となった彼らの束の間の冒険譚。(約20分×全3章構成)


[感想]

横浜開港150周年記念イベント「開国博Y150」に合わせて、企画・製作された"ロトスコープ"アニメーション。

ストーリーのメッセージ性は若干欠けるものの、映像技術を見せるという側面が強く、その点では、かなり楽しめる印象。

ロトスコープとは、実際に実写で撮影した映像を後から絵におこしていく技法で、これが後の監督作品(『TOWN WORKS』や『花とアリス殺人事件』)に繋がっていくと思うと、とても興味深い

(ちなみに、同じ技法を使った作品には、『白雪姫』やTVアニメ版『惡の華』などがある。)

『BATON』(=バトン)というタイトルは、数千年生き残り続ける"サイファ"というプログラムが、様々なロボットへ寄生し、"引き継がれていくこと"を指しているのだろう。
本作で描かれるのは、そんな流れの一端だった。

なんといっても、本作の見所は、特典に収録された撮影風景を切り取ったメイキング映像。

実写撮影では円谷プロダクションの力を借り、大迫力のアクションシーンをおさめ、撮影した映像を海外のチームがアニメ化する。

この流れが映像として、記録された特典映像は、正直、本編よりも見る価値があった。


[各話の雑感]

Episode 1 「密航者」
出演:ケイン・コスギ、市原隼人、上戸彩など。
密航者の逃走から、主人公たちの登場へと繋がるプロローグ的な初回。
さすが、邦画アクションの奇才・北村監督だけあって、早速、アクションシーンが映えるスタート。
前半部分は、まるまる台詞がなく、ひたすらバトルシーンだけで魅せる手腕はさすがだった。
それにしても、突然のケイン・コスギ登場には笑ってしまった。
ロトスコープという技法を使っても、なお、はっきりと分かる顔の濃さに、ニヤニヤが止まらなかった。

Episode 2 「アポロとミカル」
出演:大杉漣、内藤剛志
謎のOS・サイファを取り込んでしまった主人公が、研究所へやって来る回。
博士役の大杉漣さんが、1人で複数の自分を演じるというカオス回。
女装した大杉さんに関西弁の大杉さん、グラサンをかけた大杉さんが、蜘蛛の足方式で首だけ天井からぶら下がっているという光景が、かなり異質。
中盤からはプラグスーツを着た内藤剛志さんが登場するという大盤振る舞いで、かなりクセの強い世界観が発揮されている。

Episode 3 「サイファ」
出演:藤原竜也、ミムラ、IZAM、ムッシュかまやつなど。
物語の発端となったOS・サイファの回想から、主人公たちの冒険の顛末を描くシリーズの最終章。
恋愛感情が芽生え、ロボットとしての存在意義に悩むサイファを数分で描いていたのは、かなり興味深い。
しかし、そんな彼を演じるのが、藤原竜也さんということもあり、いつも通りの藤原節が出てしまっていることに笑ってしまう。
クライマックスで、ファンサービスのように、上戸彩さんの顔が登場し、「それでいいんかいっ!」なオチに収束してしまうところには、若干の肩透かしも……。
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