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狼と豚と人間のHKのレビュー・感想・評価

狼と豚と人間(1964年製作の映画)
3.7
「仁義なき戦いシリーズ」などの深作欣二監督による初期監督作品。キャストは高倉健、北大路欣也、三國連太郎などなど

日本のスラム街で育った三兄弟がいた。長男はもうその界隈では成功しており大出世していた。次男もその筋では有名だが一匹狼であり徒党を組まな人間だった。三男は悪い仲間たちと共に燻っていた。ある日、次男と三男は協力して麻薬取引現場を襲い金品を奪うことを企てるのだが…

展開の仕方には粗っぽさが目立つが、退屈する空間をほとんどなくして見せるパワフルな初期の深作映画である。

高倉健は70年代以降の哀愁漂う印象しか残っていないためにこの映画内における結構なはっちゃけぷりには若い自分としてはびっくりした。それでもやっぱり無理して演技している感はある。

劇中健さんが相手を思いっきりぶん殴るシーンが何回か見られるのだが、ボクシングやっていた健さんに振りかぶられるのは怖いですね。

映画は最初からゴダール映画かサムペキンパーの映画のように明るい音楽に合わせながらも短いスパンでポンポンと彼らの生い立ちを説明してのスタート。このテンポ感はたまらない。

それでいて、序盤はスラム街で北大路欣也が死んだ母親の骨壺を海に落としながらミュージカルを歌う。ここでの演出もなんというか若々しさと華やかさをスラム街のギャップの中でだす演出としてとても素晴らしいと思いますね。

事態は展開し、三郎が金品を仲間内で独占するために次郎とその相棒を裏切ってそれらをどこかに隠してしまう。次郎は彼らから場所を探るためにひたすら拷問をする。

その拷問も、やはり東映的な表現と言いますか、とにかく叫ぶ。指をプレス機で押しつぶしながら一人一人に拷問する過程であったり、唯一の女性の仲間を犯したりするなど極悪非道の限りを尽くす健さんが印象的。

もう一回言いますが、健さんって悲哀があるからこそ影を背負っているような雰囲気を醸し出しているために、ここまで徹底的に悪役を演じているのは意外と言いますかね。それでもやはり役としてはちょっと違和感が残るようなものでしたね。

健さんがあまりにもやりすぎるので個人的には途中で笑っちゃいました。深作さんってやっぱり仁義なきにも精通するのですが、とにかくオーバーリアクションで暴力シーンや殴り込みシーンを迫力で見せる人なのでこういう所はコミカルになってしまうのは致し方ないかもしれませんね。

この映画にはまだデビューして間もないばかりの石橋蓮司が出ています。一番三郎の仲間内ではびびりの役をやっていて、演技もまだ棒読み。でも後年のアウトレイジなどにも通じるどこか気の弱そうで可哀想な目に合うのに最適な脆弱ぷりはこの頃から醸し出していますね。

ハイスピードで彼らの破滅を描き切る所は当時の深作さんはやはりゴダールの映画からインスピレーションを受けていたのでしょうかね。航空での描写なんてまんまそれだし、最後のあっけなく終わる場面などの爽快感と破滅的な終わり方は「勝手にしやがれ」に精通していると思います。

自分この映画、レンタルで借りて見たのですが、返すぎりぎりで眠い中見たのでもっとちゃんと見ておけばよかったかなと思いますね。ですが眠気も覚ますほどのアップテンポで見せてくれてとても良かったと思います。

また見てみたいですね。
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