Oto

裏窓のOtoのレビュー・感想・評価

裏窓(1954年製作の映画)
3.8
「裏窓の当初の狙いは純粋な映画テクニックへの挑戦だったが、いつしか裏窓から見える光景が世界のイメージそのものに膨らんだ」という記述がトリュフォーとの対談であったけど、たしかに映像表現として興味深いものが多かったな〜。セットを作って細かい角度からタイミングまで計算尽くしているようだけど、流れるようなカメラワークとかカットバックの光景次第でその後の表情が全然違うように見えるから面白い。電球で目をくらませるのとか、ぶら下げられた猫とか、望遠鏡やレンズショットとか。『向かいの窓』と比較してもヒッチコックの手法というのはまだまだ通用する新しい表現だとわかる。

ロマンス映画としては非常に楽しめて、リザは登場シーンから目を奪われてしまうし、そこからサスペンス・ミステリーに変わっていくと思いきや、再びロマンスとして着地して、二人の関係性に面白い変化がある。雑誌のオチいいよね。
でもミステリーとしては尻切れとんぼに感じてしまって、推理通りでしたってのも裏切りがないから少し物足りない。群像劇も期待していたけど、隣人たちが違いに無関心でほとんど交流しないから、ラスト(ピアニスト、ダンサー、犬...)のその先がみたかったのに〜と思った。

動けない主人公というのは非常に勇敢な選択だなぁ、動きがない分、会話のユーモアとかショットの工夫で飽きさせない工夫は施されているけど、やっぱり切り返しだけでステラとの長い会話見せられると少し眠たくなった。カメラマンという設定は生きてるし、骨折とか暑さとか理屈もちゃんと考えられてたけど。
裏窓から覗く隣人の生活は、現代におけるSNSのタイムラインだという考察が面白い。ジェフが住むアパート面がほとんど映されずに落下シーンを見せ場にするという引っ張り方も好き。何より好きだったのは音の使い方(ピアノ、犬、電話...)で、限られた空間の想像力を広げるような演出が見事だった。年配の役者の知り合いがほしいな〜
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