ふしみあい

パラダイムのふしみあいのレビュー・感想・評価

パラダイム(1987年製作の映画)
5.0
カーペンター!!!
始まりから最後までずっと不穏。アメリカはカリフォルニアが舞台なのに、こんなにどんよりした太陽、見たことない。どんなロケ地でも自分の世界観にしてしまうカーペンター、天才だ。

不穏な教会、司祭と十三人の科学者、禍々しいエネルギーに満ちた液体の柱。素材が揃えばあとはもうカーペンターの最高楽しい・最高クールなホラー映画の出来上がり。

リンチのブルーベルベットのような虫たちが蠢き、陽は陰り、人々は異常な雰囲気を放つ。じわじわと迫ってくる恐怖と常にそばにある不穏な空気。
セットも格好いいし音楽は言わずもがなでカーペンター。全編同じ旋律の音楽のバージョン違いを使っているので統一感がある。

一人また一人となんだかよくわからない、違う世界の住人とやらに侵食され、殺され、操られていく。邦ホラーのようなじわじわとした静かな恐怖感に息を飲み、画面に見入ってしまった。一点を見つめたまま動かないとか、目を見開きながらキーボードカチャカチャとか、無言で両側から迫ってくる大衆とか怖すぎる…。

そしてこれだけ色々感想を言って来たけど、つまりは終わり方が最高!と言うことを声を大にして言いたい。カーペンター映画の幕切れは本当にいつも鋭いけれど、中でも本作は切れ味良すぎてもうほんとにER入った瞬間テンション上がりまくったし、映画が終わる瞬間、終わってしまうのに観客のテンションを上げていくスタイル、最後のあの一瞬のためにそれまでの静かな攻防があったのかと思うほどだった。
もうカーペンターさん本当に大好き、映画の終わらせ方を知ってる男だよあなたは。それまでの「コーヒーでも一緒にどう?」からのベッドインとか、首ゴロンとか首グリンとか、自転車が凶器とか、そういう細かい好きがたくさんあって、そして最後の一瞬の切れ味。センスにクラクラする。

全然万人受けじゃない映画だとは思うけれど、こう言うカルトっぽい雰囲気の映画が大好きだなあ。