シズヲ

ドライビング Miss デイジーのシズヲのレビュー・感想・評価

ドライビング Miss デイジー(1989年製作の映画)
3.8
なんだか不思議なものを見た気分。見終わった後には奇妙な余韻を抱く。感動したような、寧ろなんか切なくなったような……よくわからないんだけど、とにかく印象に残る。特に劇的なドラマは無いし、最初から最後まで凄く穏やかでゆるりと話が進む。温厚な日常を切り取って淡々と描いたような作風は、間違いなくこの作品の持ち味になっている。過剰なドラマチックさを廃した話運びは好き。ジェシカ・タンディとモーガン・フリーマンの繊細な演技も良い。

偏屈なユダヤ人女性と運転手の黒人男性が交流する話なんだけど、単純な友情の物語かと聞かれるとそうでもない印象。話の軸となる二人の関係性の傍らで「人種差別」の描写がスッと出てくる。何気ない台詞や登場人物の態度などで、ナチュラルに当時のそういった風習が描かれている。ユダヤ系で人種差別を否定しているデイジーですら終盤に差し掛かっても自然にそういう素振りを見せてくる。そんな描写が暖かい空気と共にすんなりと差し込まれるのが、なんというか、こう、余りにも生々しい。一筋縄ではいかない話に見えた。そういう意味で独特の作品。
シズヲ

シズヲ