シズヲ

カムバック・トゥ・ハリウッド!!のシズヲのレビュー・感想・評価

3.2
借金まみれのB級映画プロデューサー、一発逆転の奇策!!多額の保険金をかけた老・西部劇スターを撮影中の事故に見せかせてブチ殺せ!!あらすじの清々しさに関しては始まる前から優勝している。どうやら1980年代の映画のリメイク作品らしい。

ロバート・デ・ニーロ×トミー・リー・ジョーンズ×モーガン・フリーマンというレジェンド級のトリオが集っているが、やっていることは何だか妙な感じのブラックコメディである。ジョージ・ギャロ監督は『ミッドナイト・ラン』の脚本も手掛けており、デニーロとはその頃から縁があるみたいだ。近年ではフリーマンとやけに組んでいるので、なんやかんや親しいのかもしれない。

前述した通りブラックコメディ的な作品だが、名優3人が並び立っているのもあってそんなにユーモアには振り切れられていない。所々でちょっとクスッと笑えるが(「お前が馬を脱走させ!!俺が訴えられるのか!?」好き)、映画を引っ張るような力には乏しい。演出に関しても特筆すべき部分が無いので、終始に渡って何処かこじんまり無難に収まっている感が否めない。確かに名優3人はそれぞれ良い演技を披露しているが、それが映画の面白さに貢献しているのかは定かではない。とはいえデニーロのボンクラぶりやジョーンズの枯れた力強さ、フリーマンの神経質な演技など、いずれも存在感は確かにある。

単なる詐欺企画だった『荒野の老銃士』が撮影を通して思わぬ出来栄えになっていくことが物語の肝だけど、作中の撮影風景やフィルム映像の描写を見た感じだと正直そんなに面白くもなさそうなのが困る。1970年代半ばの西部劇にしちゃ筋書きも含めてだいぶ凡庸に見えるというか、スタッフロールで流れる『尼さんは殺し屋』が妙に楽しそうなのでどっこいどっこいに見えてしまう。終盤の展開は「レジー、『明日に向って撃て!』とかも見てるのにこの程度で感動していいのか?」とちょっと思ってしまった。

映画撮影のブラックコメディとしては今ひとつ突き抜けられず、風刺劇としての興味深い視点も無いので、とにかく手堅く小さく纏まっている印象。とはいえこの3人の名優が一同に介しているだけでもインパクトはあるし、彼らのお陰で本作は保っている感はある。尤も、彼らが居るから映画がボケきれてない感もあるけど……。

そんなこんな言いつつ本作、デューク・モンタナという“すっかり老いた過去の西部劇スター”の扱われ方に何だかしんみりしてしまう。「子供の頃、貴方の映画を父親と見た」「俺はあんたのファンだった」等という台詞が出てくるように、デュークは作中において立派に愛されているのだ。ファンにとって映画スターはどれだけ老いてもなお映画スターであることを示す描写、何とも憎めないものがある。
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