茶一郎

フランケンシュタインの茶一郎のレビュー・感想・評価

フランケンシュタイン(1931年製作の映画)
4.1
 説明不要な最も重要なモンスター映画の一つ。「フランケ〜ン」「いいよー」なんてお笑いのネタが出てきた日には頭を抱えましたが、それもこれもメアリー・シェリーの重厚な文学小説をポップに映像化した本作『フランケンシュタイン』、何より鬼才ジャック・ピアスの特殊メイクによる一目見たら忘れられないモンスターの造形の素晴らしさ故です。

また哀しきモンスターの悲劇、大衆の怖さを描いた作品として特にティム・バートン監督作、直接的な『フランケンウィニー』、物語の軸をそのまま引用した『シザーハンズ』に影響を与え、もう一つのテーマ「神を忘れた科学者」、科学の暴走は『ジュラシック・パーク』に続く『ジュラシック・ワールド』シリーズや、最近ではリドリー・スコット監督作『エイリアン:コヴェナント』も本作の変奏版と言えるように思います。

映画が始まると、語り部の「おどろおどろしい場面が登場します」、「心臓の弱いかたはご退出をおすすめします」というセリフ、キャストクレジットの「Monster」の配役が「?」になっている演出など、いかにも見世物的な冒頭とは一変して、劇中はフランケンシュタイン博士の研究所(という名の屋敷)を巧みに舞台劇的に切り取る演出が冴え渡り、画面に現れる光と影は『吸血鬼ノスフェラトゥ』系譜の古典的な美しさを持っている何ともアート寄りの作品だと思いました。
そして、その冒頭の「おどろおどろしい場面」というのはフランケンシュタイン博士によって生み出された怪物を指すのではなく、人間・大衆を指すものである事が判明します。人間のおごりと、人間の怖さをフィルムに焼き付ける『フランケンシュタイン』。
話が変わりますが、「フランケンシュタインはあくまでも『科学者』の名前であって、あのモンスターの名前ではない」という映画ファンがよくする指摘、そろそろ止めにしたいですね。(自戒の意味も込めて)
茶一郎

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