あなぐらむ

憎いあンちくしょうのあなぐらむのレビュー・感想・評価

憎いあンちくしょう(1962年製作の映画)
4.0
まるで裕次郎本人の様な若きタレントとその美人マネージャーが、純粋な愛を探し求めて日本を横断するロードムービー。後に「夜明けのうた」等と共に典子三部作と呼ばれるだけあって、本作では石原裕次郎はダシだと言っていいほど、それはそれは見事な浅丘ルリ子映画。
冒頭~タイトルバックの破天荒なカッコ良さ、蔵原監督らしいジャズ味のある劇伴で作品に惹き込まれる。小物、衣装の洒落た感じも見所。実際に東京から九州までがっちりとロケを重ねた外景も素晴らしい。ショット毎のギャラリーの多さに大スター・裕次郎を実感できる。

山田信夫のホンは変わらず観念的だが、早いテンポでまくしたてる台詞を重ねる日活調作劇で何となく見てしまう。
裕次郎とルリ子が恋のデッドヒートをするきっかけになるのは清廉な佇まいをみせる芦川いづみ。自信たっぷりに純粋愛を語る眼差しの涼やかさが、情念的なルリ子と好対照。お馴染み長門裕之が持ち前の軽妙さで話をかき回すのも良い。
これだけの尺の中で主要な人物が少ないのも珍しいのではないか。蔵原監督はこの年「銀恋」、本作そして「硝子のジョニー」と重量感ある傑作が続く。間宮義雄の眼の眩む様な自由自在なカメラが印象的。"旅ものの日活"らしいモダンな一本。若干、尺が長いとは思う。