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サルバドル/遥かなる日々のHKのレビュー・感想・評価

サルバドル/遥かなる日々(1986年製作の映画)
3.9
後に「プラトーン」「ナチュラルボーンキラーズ」などの名作を生み出すオリヴァー・ストーン監督による初期の佳作。エルサルバドル内戦を舞台としている。キャストはジェームズ・ウッズ、ジェームズ・ベルーシなどなど

右派の政府軍と左派のゲリラ軍による抗争が激化していたエルサルバドルにアメリカからアシスタントを連れてきて取材をしに来たジャーナリストの男が、エルサルバドルにいる恋人を守りながら戦場の真実(スクープ)を手に入れるために奔走するストーリー。

オリヴァー・ストーンの映画は今回初めて見ました。そしたらこんなにもドキュメンタリーチックというか、東宝の史実映画のような映画の話運びをする人だと確認できてよかったです。

同じ、エルサルバドル内戦を扱った作品で自分が5.0にした「イノセントボイス」という作品がありますが、あれが現地に住む住民や少年を中心にマクロな視点で物語っているのだとすれば、こちらは「日本のいちばん長い日」のような上層部らの政治的な様相を中心に一大スペクタクルで物語っている。

主人公の男はお調子者のくずであるが、愛人をこの激化する戦場から逃すためにビザの発行なのに東奔西走し、それでもなお同業者の相棒と共に戦場カメラマンとして真実を激写しようと命を懸ける。

あくまで、そのような一人の男の奔走劇を中心にしながらも、山積みになった死体の山や手足が爆撃でなくなってしまった少年たちなど、巻き込まれてしまった人たちの痛々しい姿などをまざまざと見せてくる。

しかし、後年のイノセントボイスに比べると視覚的にショッキングな映像描写は多少は影を潜める。しかしその分、上層部の人たちの政治的攻防と軍部による衝突、テロや虐殺に焦点を当てており、大作邦画が好きな私にとっては見ごたえのある展開であった。

中でも、政府側の極右軍である死の軍隊による大虐殺劇がこの映画のいちばんの見せ所で肝となっている。彼らは労働者グループとして、司教や尼増など社会的に優位な人たちを殺しまくったらしいのだが、この映画でもそれが顕著に出ている。一番ショッキングなのはアメリカから派遣された尼増たちが老齢なお婆ちゃんも含めて侵されたあげく銃殺されるシーンだ。あそこのシーンは武映画的なドライな空間に包まれ、それが余計に後味を悪くする。

終盤は、相棒が命がけで激写したフィルムと共に、アメリカ側からの要請を受けて彼らがエルサルバドルから脱出できるかの攻防戦で常に緊張感を張り良かったと思います。そして最後はきれいに終わると思ったら…またもや後味悪いラスト。本当にありがとうございました。見れて良かったと思います。

主役の人の早口がすごい。
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