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野火のHKのレビュー・感想・評価

野火(1959年製作の映画)
4.0
大岡昇平の実体験に基づいた小説を「ビルマの竪琴」「金田一耕助シリーズ」などの市川崑が映画化。

後に、塚本晋也さんがリメイクしていますね。

太平洋戦争の末期に、日本が劣勢の時の、レイテ島が舞台となっています。主人公は肺病を患い上官から野戦病院に入院することを命じられます。入院を拒否されたら手榴弾で自害しろとも命じられる。この時点で当時の戦況とか日本兵の異常さが垣間見れます。

上官の言われた通りに行ってみれば、病院には瀕死の状態の兵士達が床一面を覆っています。最早入院は不可能で林で待機する以外ありませんでした。しかし、アメリカからの爆撃に遭います。病院にいた大勢の兵士達が出てくるシーンは、最早ゾンビ映画でした。

主人公の田村を演じているのは船越英一郎のお父さんである船越英二さん。この映画では常に飄々としており、今見ればどう考えても可笑しい状況でもあまり大きなリアクションをすることでもなく、妙に冷静ぶっている所が却って不気味に感じます。恐らくもう自分の運命とか受け入れているのでしょう。

そんな彼が体験したり目にする光景はどれも惨憺としています。パロンボンに向かうため、街頭を突っ切ろうとするもアメリカ兵に爆撃されます。挙句山野を放浪すれば、蠅がたかっている頭のおかしい日本兵にも遭います。そんな中でも正気を保っているこの男はすごいですね。

挙句、永松と安田という仲間と合いますが、そこで干からびた猿の肉を渡されます。歯が折れて食えなかったのですが、まあ、あれが人肉とは…非常に恐ろしいです。カニバリズムです。

しかし、あんな生の葉っぱとかを平然と食べたり、泥まみれのイモを食ったりする状況下、食糧に困ったらあんな行動に走ってしまうのは致し方ないのかもしれません。

最後まで最低限の人間性まで失わなかったのか、それとも失えなかったのか、最後は野火のある方へ…

戦争を知らない人たちにもぜひ見てほしい市川崑さんの代表作ですね。塚本晋也さんのリブート版も見たいです。

というかそろそろ「日本のいちばん長い日」のリブート版も合わせて、いろいろと見てみたいですね。
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