滝和也

新少林寺/SHAOLINの滝和也のレビュー・感想・評価

新少林寺/SHAOLIN(2011年製作の映画)
3.8
慈悲の心持て
己を悔い改めよ 

求道し、救道を行く
者に悟りの道開かん…

天に竹林寺!地に…

「新少林寺/SHAOLIN」

ハッ!ハッ!ハッ!ハッー!の掛け声も勇ましい、あの少林寺をよりリアルに、ドラマティックに描き出した武侠にして心を浄化する佳作です。

清朝末期、軍閥の台頭による戦乱は少林寺にも迫っていた。戦火に追われた難民を救済する少林寺の僧たち。そこに現れたのは軍閥の将、侯杰。少林寺へ逃げ込んだ敵将を無残にも殺し、寺をも愚弄。だが…盛者必衰の理の如く侯杰も部下の曹盤に裏切られ、娘をも殺される。少林寺に助けられた彼は自らを悔い、修行の道へと入るが…

世事の欲得に塗れた一人の男が愚行から己の愚かさを知り、少林寺にて仏の道を知り、禅の心を得て改心すると言う部分が本筋に置かれており、その姿を見る事で鑑賞者の心、いや私の心を浄化してくれます。それはあまりに自己犠牲と何人をも救済し、仏の道へと導く高潔な少林寺の精神が描かれているゆえでしょう。

故にそのストーリーはシリアス。そして壮絶です。世に悪の蔓延らぬ時はなし。自らが巻いた悪の種に苛まれる、侯杰にアンディ・ラウ。流石香港のトップスターですわ…。その残虐な面から堕ちていく姿、そして生きる為、自らの欲得を捨て、悟りを開く姿。そして業を背負い、戦いに挑む勇ましさ…そして満足げなラストの顔と…素晴らしい。何より素晴らしいシーンは寺で修行している子供との釣り鐘堂での出会いと演舞。なんてこと無いシーンなんですが、ラウの優しさが溢れ出し、彼が改心した事を美しく示すシーンなんですね。

先述した本筋を読むと宗教臭さを見る方もいそうですが、無論少林寺は武を用います。その武は力を呼ぶ、敵も然りであり、軍閥曹盤との壮絶な戦いが巨費を投じ描かれます。その爆発の迫力たるやエクスペンダブルズかランボーか。大迫力です。そしつ銃器に少林寺の武で立ち向かう、他者の為に命すら投げ出し戦う師父、師兄達の壮絶な姿に涙するのは間違いありません。思わず合掌してしまう…。

アンディ・ラウ演じる、侯杰を導く寺の炊事長に我らがジャッキー・チェンが。特別ゲストにして生きることを伝える重要な役で登場。食べることは生きることですからね。そして使い手でない役ですが、やはりジャッキーらしいコミカルでかつ格好いい見せ場があるんですよね。流石でした。またラストのセリフもジャッキー故に重みがありました。

敵の曹将軍にニコラス・ツェー。二枚目イメージでしたが、こんな役もできるのかと…。憎々しげでありながら、病んでいそうな感じが素晴らしかった。またヒロインポジで脱税女王ファン・ビンビンが…(笑)まぁ色々ありましたが美しさは特級品…。ただ…何か熊切あさ美に似てませんか…何となく(笑)

ただ…ただ…私は作品内でアンディ・ラウと一緒に心を浄化されていく気がしてました。それだけ、監督の演出、演者が巧みだったからでしょう。ただ…主筋のストーリー重視故にやや武、少林拳の見せ方が前作少林寺に劣る点(リーリン・チェイ=ジェット・リーがいれば…)またアンディと兄弟子達やジャッキー以外の少林寺の仲間との交流がもう少し描かれたらという部分(ラストバトルへの繋がりや盛り上がりにも通じます)がきになり、下げてますが、かなり好きな作品です。これは…世俗の垢に疲れた時に見ると高潔な精神へと導かれる作品です(笑)

少林寺は皆の心にある

からです(^^)
滝和也

滝和也