アン・リー監督の悲哀のラブストーリー。いつ観ても名作。
戦時中の香港は、深刻な格差問題と戦争思想の対立により混沌としていた。富裕層の煌びやかな生活の裏側には、悲壮感が滲み出る貧困層の現実がある。主人公である大学生のチアチーは、ある日学内でクァンと出会い演劇サークルに誘われます。
チアチーが自ら選んだ茨の道。それは想像以上に過酷なもので、明日の補償がない。心身共に追い詰められる彼女が、負けずに任務に食らいつく姿が印象的。観る方は常に最悪の事態を予想しながらも、彼女に情が湧いてきて行く末を見届けたくなる。
タン・ウェイの幼さが残る綺麗な顔立ちに終始見惚れる。女スパイをこれ程可憐に演じられる人は他にいないのでは。時折見せる妖艶な眼差しも素敵でした。対するトニー・レオンは存在感抜群で、冷徹で支配的な役柄がハマっていました。見えそうで見えない狂気が恐ろしい。
過激なsexシーンは、互いに決して素の顔は明かさずに性に溺れていく様がとても芸術的に撮られています。刹那的だからこそ燃え上がる二人の関係性から目が離せない。
本作のキーポイントとなる「切なさ」が全面に溢れているテーマ曲を聴くと、自ずと胸が締め付けられる。チアチーが検問に引っ掛かった時に浮かべた哀しげな笑顔が頭を過ります。
これからも定期的に観ていきたい作品です。