torakoa

テンペストのtorakoaのレビュー・感想・評価

テンペスト(2010年製作の映画)
3.0
珍品。
妖精の描写がヤバい。麿眉風味で白っぽいメイクの全裸な人が、80年代ファンタジーかみたいな不思議感で出没してみたり飛んでみたり巨大化してみたり増えてみたり人面蛙になったりする。シリアスギャグなのか。何か凄いものを観た感。

妖精役はベン・ウィショーさん。歌は本人歌唱だろうか。うまいな。彼ファンが真面目に楽しめるかというと複雑じゃないかなと思うけど、カラスっぽくなってた時はビジュアル面も動きとかも素敵だったので是非。

唐突に『寝取られ男のラブバカンス』のロックスター(ラッセル・ブランドさんφ(.. ))が出てきたとこでも噴いた。ナポリ王の人威厳ある感じの演技だなー、ジャイモン・フンスーさん舞台演劇的なオーバーアクト気味かつ力入った芝居を見せてるなーからのこれはw
「平べったくなってれば気づかれないだろう」ってとこから面白かったか。

色々ちぐはぐな感じでアホっぽい作品になってる気がしたが、世間的にはそうでもないんだろうか。ヘンな感じが楽しくなってしまったので私は嫌いじゃなかったけど、話はこれでいいんだろうか。

一切ネタバレが嫌な方は以下読まないよう。



陥れられ地位を奪われ、娘(3歳児)と共に海に流され十数年。そいつらが近海を通りがかったから復讐の機会だ恨み晴らさでおくべきかと魔術で嵐を起こして自分のホームにおびき寄せ、ナポリ王(復讐したい順位第2位)んとこの王子と自分の娘を娶せてうまくいったからスッキリした、みたいな話。

元々シェイクスピア作品の魅力がわからない俗物なもので、何だこりゃと思ったのですが。テンペストはタイトルだけ知っててカッコ良さげだなと思っていましたよ。コミカルなとこある演物だったんだなあ。

大公である夫の後を妻(一応主人公)が継いだってとこ。英国の文芸もので、娘しかいないから甥に継がせるってな話がよくあるので引っ掛かった。原作では男性である人物を女性に変更したことを気づかせようとした訳でもないだろうが、元ネタ知らなくても別に困りはしない。何かヘンだなーとか唐突だなーとか中途半端だなーとかは思うけど。

演技は興味深いというかバラエティに富んでるというか、それぞれ観応えある演技を見せているかと思う。壮大そうで大仰な台詞に合わせたのか舞台演劇らしい大芝居気味な演技も散見しつつ、映像作品に落とし込んだような芝居をしてる方もいる。
衣装も現代的カジュアルな人もいれば時代物のコスチュームらしい人もいる。
CGは80年代か?ぐらいなセンスにより、CGらしからぬ雰囲気を醸し出している。
等々、全体的にまとまりがなく散漫というか雑多というかな印象。話もそんな感じだから合ってるっちゃ合ってるのかなー。

キャラや美術等のデザインは悪くなさそうだけどチープに見えるし、時折テレビ映画っぽく見えてしまうのは何故だろう?照明とかかなー。何だかB級感。
音楽は個々に見ればそう悪くなかったとしても使い所や使い方のセンスが微妙。

古い舞台作品は映像作品に落とし込むのが難しくなってきてると思う。困難でも挑戦したくなる魅力があるのだろうけど、その魅力が伝わってこない映像化では何がしたかったんだ?ってなるだけのような気がするし、この作品はこれといったアイデアがあるでもなく映像化してしまったように感じる。
せっかくならシェイクスピア作品を面白いと思ったことがない私のような人をギャフンと言わせてやろうぐらいの気概で作ってみてほしい。
ウエストサイド(ロミオとジュリエットが下敷き)は嫌いじゃないんだけどなー死のうとしないとこが。

クリス・クーパー出演作ゆえ鑑賞。主人公の復讐したい人堂々1位の弟役だった。その割には出番そんなになかった印象。
主人公のほうが悪役に見えなくもないのは怒りや恨みは人を醜く見せるものである、ということなんだろう。
クリス・クーパーの力の抜けた芝居、歩き方とか佇まいはよかった。好き。
ナポリ王の弟と悪だくみで意気投合して、どアップで額をくっつけながら「一緒に抜こう(剣を)」ってとこでちょっとウケてしまった。下品ですみません。

吹替なし、英語字幕なし。

鑑賞後、予告編を観たら
「完璧!
あらゆる芸術作品の中の最高峰!――THE HUFFINGTON POST」て出てきた。
torakoa

torakoa