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わたしの可愛い人 シェリのtorakoaのレビュー・感想・評価

わたしの可愛い人 シェリ(2009年製作の映画)
3.5
よくできた文芸もの、という印象。元ネタ知らないのに何だけど。
高級娼婦と書いてココットとルビがついてる美熟女ミシェル・ファイファーと、元同業者の息子で享楽的な若者ルパート・フレンドの話。
明るく茶目っ気ある音楽とか序盤の感じからコメディなのかなと思っていたのだが……。まー湿っぽさの中にもそういう雰囲気あったとは思うけども。夫婦生活描写とか、その間のヒロインとかコントみたいなとこあったし。で、そういう気分で観てると着地点がそうではなくて、何とも意地が悪いなーと。

親子ほど年の離れた二人であり、多分それぞれそれなりの矜持があり、自分が本気で恋愛にのめり込むことはないと高を括り、それぞれそうであってはならないと考える。年齢差がなかったとしても難しかったのではないかと思うが、純な愛と言えなくはないと思う。純愛と言ってしまっていいとは思わないけど。

言動も魅力も理解し難いところがある人物であるシェリをルパート・フレンドが好演してる。もたれ掛かり方とか凄く自然で、演技してます感なく板についた甘ったれ気質みたいな感じとか、この人凄い役者かもと思った。ヌヌーン(彼独自のヒロインの呼名)て言い方に色々凝縮されてる気がしたし。細身ながら程よく筋肉ついてて彫刻か何かみたいな美貌も何か凄かった。こんなのが慕ってきて気が合うっていうんだもんなー。日々ウィットに富んだやり取りしてそうだったし。
ヒロインは多分、知性があり美意識が高く、姿も言動も美しくありたい人なのだろう。みっともないと思うことをするのは抵抗があってできない。
こういうのクーデレって言うんだろうか。二人とも多分そう。それゆえの哀愁や愛着が描かれていたと思うので、クーデレ愛好者は観たらいいんでないか。

小説であれば地の文で描写されているであろう心理描写を、演技で表現しようとしてる感じがよかった。ナレーションはあるが、必要最小限にしてある感じ。
ただ、ラストのナレーションは不要だったように思う。実話ベース作品ならともかく、フィクションでそれはどうかと。しかしながら、その中にある登場人物の愛や憧憬がどこか救いにも感じ、メリーバッドといった後味になっていたので、あのナレーションを絶対不必要だったとは断言しきれない。たちが悪いなとは思うけど。

レンタルDVDにインタビューというかメイキングみたいなのちょこっと入ってる。
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