恭介

羊たちの沈黙の恭介のレビュー・感想・評価

羊たちの沈黙(1990年製作の映画)
4.3
名作と言われる作品や
途方も無い興行収入をあげる作品は
映画産業の流れをも変えてしまう。

その作品が属するジャンルの中で
流行り、の主流となり数多くの
模倣作品が乱発され、一時代を
築いてしまうほどの影響力を持つ。

ただ、この羊たちの沈黙と言う作品。
ホラーというカテゴリーに分類される
のには少し抵抗がある。

アカデミー作品賞を受賞した初の
ホラー映画。という謳い文句にも
何か釈然としないものが・・

確かに猟奇的殺人やサイコパスなどを
扱う作品の大半はホラーだ。

本作でもバッファロー・ビルという
猟奇的殺人を繰り返すサイコパスと
ハンニバル・レクターという稀代の
サイコパスキャラが登場する。

自分が本作をホラーと思えないのは
やっぱりこのレクター博士のキャラ設定に
影響を受けているからだ。

頭脳明晰、立ち振る舞いが知的で
沈着冷静。そしてどこかしら
チャーミング(笑)だ。

またクラリスにバッファロー・ビルの
ヒントを与えて事件解決に導くなど
真正のサイコパス臭がしない。

と、思ってたら顔をガシガシ
警棒でガンガン
挙げ句の果てには死体をアート作品の
ようなオブジェにしてしまう荒技を(笑)

しかしこの一連の流れも脱出の為に
全て計算し尽くされた残虐行為。

無意味に無差別にハイエナが食い散らかす
かのような殺戮行為ではないとこに
知性とスマートさを感じて我々は
彼に魅了されてしまう。

まさに魔性のキャラクター。

そんなキャラクターを産み出した
本作はカテゴライズしにくく強いて
言うなら極上のサスペンス映画だ。

本作ではレクター博士の登場時間は
かなり短い。にも関わらず観客が
虜となりアカデミーでも主演男優賞を
かっさらっていく。
また、猟奇的殺人を扱っている
キワモノ的な作品なのに作品賞を受賞。

本作の与えた影響は、その後
プロファイリングという言葉を
一般化し、雨の後のタケノコのように
亜流のサイコパスキラーを産み出した事
から、影響力の大きさが伺える。

ジョディ・フォスターにしても
アンソニー・ホプキンスにしても
監督の希望した第一候補の俳優では
なかったけど、2人ともアカデミー賞を
受賞。

改めて観返してみると、2人はまさに
渾身の演技だ。
特にホプキンスは明らかにレクターが
憑依している(笑)

ダークナイトの
ジョーカー、ヒース・レジャーを
観た時にレクターを観た時の
デジャヴを感じた。

やはり人知を超えた途方もない
悪の権化という者からは抗い難い
魅力がフェロモンのように放出されて
おり、知らぬまに虜にされてしまう。

レクター博士はそれを体現している
唯一無二のキャラクターだ。
恭介

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