きざにいちゃん

恐怖の報酬のきざにいちゃんのレビュー・感想・評価

恐怖の報酬(1953年製作の映画)
4.0
WOWOWのアンリ・ジョルジュ・クルーゾー特集にて。
ロイ・シャイダー主演のリメイクが有名な名作のオリジナル作品。
劇場公開されたリメイク版が90分。その完全オリジナル版が120分で、オリジナルの今作は150分の長尺。
ニトロ運びに出発するまでのパートがやや冗漫としているが、リメイク版と違った面白さがある。

ちょっとの振動で爆発してしまうニトログリセリン運搬のサスペンスについては、リメイク版の方が演出が巧みで、リアリティとスリルに溢れていて、ハラハラドキドキの連続である。
一方のオリジナルは、トラックに積み込むところまではヒヤヒヤするが、本番の運搬では意外にもさほどスリルを感じない。
サスペンス・シーンの描写よりも、リスクに満ちた極限状態に置かれた登場人物たちの葛藤、友情などの人間ドラマに重きを置いて描かれる。二つの作品は予想以上に切り口とタッチが違っていて面白かった。

人物設定も異なり、物語の結末もまた異なる。
どちらがいいかは人によって好き嫌いの分かれるところだと思うが、今作の人間ドラマは、なかなか見応えがあった。
リメイクにあたって、当時の映画技術を駆使して古典を撮り直したというだけでなく、古典を新たな切り口で開いてみせるという技法依存でない映画としての新しさを追求しているあたりは、リメイクのひとつのお手本と言っていいのではないだろうか。

最後に…
2台のトラックのうちの一台を運転するイブ・モンタン演じる主役がマリオ。もう一台を運転するマリオの友人がルイージだが…
もしかして、スーパーマリオのキャラはこの映画から生まれた?