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いまを生きるのsoのレビュー・感想・評価

いまを生きる(1989年製作の映画)
5.0
教室の真ん中でキーリング先生が暗誦する詩に耳をすます生徒達の顔!
得体の知れない何かすごいものに初めて触れてしまったというような、驚きと嬉しさが入り混じったその表情。
若かった頃、自分にも心当たりのあるそんな瞬間が思い出される、瑞々しい喜びに彩られた青春映画。

教科書は破り捨て、皆を机の上に立たせるキーリング先生の授業に、徐々に縛られていた心が解放されていく生徒達。
まだ半信半疑ながらも詩の美しさを知ったばかりの彼らが、
夜中に寮を抜け出して洞窟で詩を読み合うところは、
詩に限らず美しいものに出会ったばかりの若者特有の無邪気な高揚感が伝わってくるし、
本当に好きなものを見つけたと確信するニールの舞台での輝かしい姿に、自分まで彼の仲間になったように誇らしく嬉しい気持ちになっていた。(彼の末路を知りながら観るとき、とても涙なしには見ていられないけれども)
また、学校を取り囲む自然が美しく、紅葉の中を自転車で走り抜けていくシーンからは、詩によって自分の恋心に火がついたノックスのその純粋な喜びが風景となって伝わってくる。

キーリング先生の同僚や生徒の親達が言うように、分別のつかない若者に自由を教えるのはたしかに危険なことなのかもしれない。
キーリング先生が生徒達に教えたい「カルペ・ディエム(今を生きろ)」の精神と、生徒達がその言葉を信じて起こす行動がもたらす引き返せぬ悲劇。
その間で苛まれる先生の姿は悲しい。悲しいけれども、そんな中迎えるラストシーンには、キーリング先生も、ソローの詩も、生徒達に起こった全てのことも肯定してくれる力があって、大好きだ。

オールタイム・ベスト!
3度目の鑑賞ながら、何度みても後半はずっと泣きっぱなし。
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