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マイ・フーリッシュ・ハートのsoのレビュー・感想・評価

3.0
「チェットベイカーの自伝を読んだ者は必ず鬱を発症する」と某ジャズ評論家が発言しているのを読んで震えたのを思い出した。
音楽映画でこれほどの後味最悪映画は滅多にないと思う。

「実在する人物とは関係ありません」と冒頭に断りがあるものの、こんなのきっと形式的なもので、映画で描かれている彼の多くの奇行は事実に基づいてるとしか考えられない。だって、とても正気の人間では思いつかない言動が多すぎる。

どんなにドラッグや暴力に溺れても、むしろ音楽は美しさを増してゆく一方。
麻薬で芸術家が捕まる度に「作品と作家は別物」論争が起きるけど、そんな地上のレベルで語ることもはばかられる、悪魔のような人間と天使のような音楽に、人間って何なんだ?美しいとは?と考えさせられる。

チェットの死の真相を追う経緯で彼の音楽に触れる刑事。
スピーカーから流れてくるチェットの「Every time we say goodbye」を聞きながらソファにもたれ、恋人との最後の時を思い出している彼の姿に、人がジャズに慰められる瞬間を見た。そして「この世に憂鬱がある限り、Bluesはなくならない」という冒頭のチェットの言葉が説得力をもって強く迫ってきた。

80年代チェットベイカーのなぜかダサくならない絶妙なファッションも再現されてて良かった。
黄色のスウェットがこんなにも似合っちゃう男、空前絶後。
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