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ジョン・F・ドノヴァンの死と生のsoのレビュー・感想・評価

3.0
かつて世界中が愛した誰もが知るポップソング、
つまりどう間違っても今映画で使われることなんてないようなポップソングを、こんなにも見事に映画の重要な一場面で流してしまうグザヴィエ・ドラン。憎い!
「マミー」のワンダーウォール以来久々に、その選曲センスに痺れた。
主人公が走り出したり踊りだしたりするシーンで馬鹿の一つ覚えの様にボウイのモダン・ラブを使う監督達は見習ってほしい。

横山剣ばりの俺の話をきけ=映画の全てだった初期作品に比べ、言いたいことはそのままに、客観化・大衆化された本作。
ジョン・F・ドノヴァンの話を聞くルパート。
そのルパートの話を聞くインタビュアー。
その二重の視点が、巧妙に、私たちをジョン・F・ドノヴァンの孤独へと誘う。
ルパートがインタビュアーへぶつける怒りは、グザヴィエ・ドランから鑑賞者への怒りでもあるのかもしれない。

しかし自分はその巧妙さ・テクニックによって、かつてのグザヴィエ・ドラン作品にあった怒りや悲しみの荒々しいタッチが抑制されてしまったと感じた。
他者を通ってろ過されたゲイの話よりも、グザヴィエ・ドランが直に話して聞かせるゲイの話の方にこそ心は動かされてきた。

それでも本作は今までの彼の作品にはない深い余韻の残る作品であり、
「真実」という言葉にこれほど実意を込められる若手の映画監督は他にいないと思わせられたのだ。
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