so

かもめのsoのレビュー・感想・評価

かもめ(2018年製作の映画)
3.5
文庫で手に入るチェーホフの戯曲をいくつか読んだ時、一番好きだった作品「かもめ」。ラストシーンの静けさがいつまでも心に残った。
そんな静けさがどのように映画で表現されているのか気になったのと、最近観る映画の多くに出演し印象的な青い瞳で華やかさと冷たい翳りを添えるシアーシャ・ローナンが主演ということで、期待して鑑賞した。

静かな情熱にじりじりと苛まれていくコンスタンチンや、前半の瑞々しく若い姿と後半の疑心暗鬼に心が支配されている憔悴しきった姿のニーナは、イメージ通りではなかったが、こんな人物だったのかもしれない、と思わせられるほどの説得力をもっていた。
何よりも、原作では想像が及ばなかった野外におけるコンスタンチンの劇のシーンが素晴らしく、あの劇が美しければ美しいほど、この作品全体が、美しく、切なくなるのだと思った。

あのいつまでも耳に残る静けさは失われているものの、映画「かもめ」ではコンスタンチンやニーナの思い描いた夢を目で直に楽しむことができる。それだけでも観る価値はあった。
so

so