むさじー

ハムレット・ゴーズ・ビジネスのむさじーのネタバレレビュー・内容・結末

3.6

このレビューはネタバレを含みます

<中世の愛憎劇を現代企業に置き換えた寓話>

ハムレットの父親である社長を毒殺し、その妻ガートルードと結婚して社長の座に就いた叔父のクラウスは、ハムレットを骨抜きにしようと副社長ポロニウスの娘オフェリアを使って誘惑させる。しかし二人の間にはやがて本当の恋が芽生え、醜い争いに巻き込まれた二人は悲劇的な結末を迎える。
まずポロニウスがクラウスと間違えられてハムレットに殺害され、ハムレットが恋人の父を殺した負い目から彼女の元を去ると、愛するようになっていたオフェリアは絶望して自殺する。オフェリアには兄ラウリがいて、父と妹を失った彼はクラウスと手を組んでハムレットへの復讐を誓い、クラウスがハムレットを毒殺しようと食事を用意すると、彼の妻でハムレットの母ガートルードが食べて死んだ。クラウスとラウリは共謀してハムレット殺害を目論むが、返り討ちに遭ってしまう。
事件が相次いだ会社からは一族の誰もが去り、残ったのはハムレットの友人で運転手のシモと恋人でメイドのヘレナだけ。会社を身売りする前に真相を話したいとハムレットはシモに父親殺しを告白する。そして会社を守ろうと身売りに反対するシモにハムレットは毒殺されてしまう。
簡単なあらすじは以上の通り。原作はデンマーク王室内で繰り広げられる愛憎劇だが、それを現代フィンランドの企業家一族に置き換え、一族内の富と権力を巡るゴタゴタとして描いたブラックコメディ。殺人や復讐という中世のドラマを、現代の会社組織を舞台にしたカウリスマキ流の寓話に仕立て上げていて、愛情すらも打算で動く資本家一族が次々に滅び、労働者階級が生き残って幸せを掴むという彼らしい顛末を皮肉交じりに描いている。
ノワールと思える世界を、乾いたタッチと淡々としたリズムで描いていくのはカウリスマキ風だが、後年のとぼけた笑いや哀愁は感じられないので、やや物足りなくはある。
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