はる

パーフェクト・センスのはるのレビュー・感想・評価

パーフェクト・センス(2011年製作の映画)
4.5
このタイミングで観ることは良かったと思う。そしてパンデミック映画で描かれるのは「他者との関係性」であったりするものだが、今作は感情によりフォーカスした内容。SFとして観るよりもロマンス、ロマンスとして観るよりもドラマなのかと。それは物語が進むにつれてそう思えるようになる作りだ。
またこれまでに観たエヴァ・グリーンの中でも出色の演技で、それだけでも素晴らしいのだけど、ユアン・マクレガーも良かったのでこれは監督のデヴィッド・マッケンジーの手腕によるものだろう。

スーザンとマイケルは似た者同士だったと思う。そういう二人が、というだけでなくイギリス社会が「喪失という感覚」を共有してやがて結びつこうとしていくのが、今さらに響く物語になったか。

SFとしての見方としては、嗅覚がまず失われてもそれほどの騒ぎにはならない。そして味覚となったときは残された感覚をより楽しむようになる。しかし聴覚となったときに人はとうとうパニックに陥るし、感染に対してようやく敏感になっていく。マスクをしなかった人たちが着けるようになったりと、この辺りの段階的な描写はリアルだった。そして障がい者の人たちの存在に思い至る。

パニックになってから次第に人と社会がそれまでの平穏を取り戻していく描写に思わず涙したし、視覚を失うラストでは、最愛の存在を探し求めて抱き合い、暗闇が訪れる。しかしこれが絶望ではなく希望を感じさせるところが本当に素晴らしい。
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