滝和也

悪霊島の滝和也のレビュー・感想・評価

悪霊島(1981年製作の映画)
3.6
鵺の鳴く夜は
恐ろしい…。

瀬戸内海に佇む、
平家落人に纏わる
刑部島…。

再び血に染まりし島に
金田一耕助の名推理が始まる…

「悪霊島」

横溝正史原作のシリーズにして、鹿賀丈史演ずる金田一耕助が登場する作品です。完成直後、横溝正史先生の逝去もあり、名コピーと共にヒットを記録しています。冒頭書きました一文がTVCNで流され…かなり怖かった事を覚えています。

金田一耕助は刑部島出身のアメリカ帰りの富豪越智竜平の依頼で青木と言う人物を探していた。だが青木は島へのフェリーに漂流していた所を引き上げられ死亡。フェリー乗り場で旧知の磯川警部から金田一は青木の不気味な最後の言葉を聞く。あの島には恐ろしい悪霊が取り憑いている…腰と腰がくっついた双子…鵼の鳴く夜は気をつけろ…と。刑部島に隠された謎を追い金田一は島へと渡る…。

金田一耕助シリーズはその日本の土着の風習や因習のおどろおどろしさ、殺害の酷たらしさと動機の深い因縁と独自の世界観が私は大好きなんです。ただこの作品、主演、監督と共に変更されてますので今では中々評価されてない気がします。やはり石坂浩二、市川崑の名コンビではないですからね。

ただ…現在見てみると、その世界観は変わりませんし、鹿賀丈史さんの金田一耕助も決して悪くない。その飄々としたキャラクターは合っている気がします。

ストーリー的に犯人が中盤でわかるため、動機やギミックの解明がメインとなるストーリーでそのプロット故に予測がつきやすいのかなと言う部分がやや落ちるとは思います。まぁ…金田一映画の欠点を逆手に取った形になってるのかもしれません。その辺はネタバレなのでコメントへ(笑)

また篠田正浩監督も不味くはないのですが、やはり市川崑の構図や巧みなカット割、おどろおどろしさを誇張する様な演出力ではやはり一歩譲る気がします。ただ…実際の妻である岩下志麻さんへの演出は流石。またその演出に答える岩下志麻さんの演技も素晴らしいです。役柄上、双子であるため、その神々しさと淫蕩さのキャラクターを見事に演じ分けています(笑)

他磯川警部に室田日出男、双子のヒロインに岸本加世子、岩下志麻演ずる巴御寮人の旦那に中尾彬、越智竜平に伊丹十三、巴の叔父に佐分利信。ストーリーテラーとなる若者五郎に古尾谷雅人。豪華なラインナップです。

公開前に亡くなったジョン・レノンの映像やビートルズの楽曲が盛り込まれ、若者代表五郎の青春の終わりの様な演出が入っているのですが…角川春樹の要望なんですかね…。ストーリーテラーとしては途中消えますし効果はあまりない気がします。それ故に…評価がされ難いのかも知れませんね。鹿賀丈史さんの金田一耕助をもう一本二本見たかったかなと僕は思ったのですが…。

追記…双子は遺伝すると言う話を最近聞いたのですが…。私の周りに数組の双子や子を持つ親がいますが、皆何らかあるんですよね。今作も…。
滝和也

滝和也