河

伯林-大都会交響楽の河のレビュー・感想・評価

伯林-大都会交響楽(1927年製作の映画)
4.4
アヴァンギャルドとドキュメンタリーの交錯したジャンルとしてcity-symphonyなるものがあるらしく、同じ時代に近代化していく街をドキュメンタリー的に撮っているっていう点で共通している。
ドキュメンタリー作家のフラハティがマンハッタンを撮った『twenty four dollar island』、ジガ・ヴェルトフがソ連アヴァンギャルドの手法をフルに使ってウクライナを撮った『カメラを持った男』、その他にもアルベルト・カヴァルカンディの『時の外に何物もなし』やヨリス・イヴェンスの『雨』『de brug』などがあって、これはハンス・リヒターやヴィキング・エッゲリングと並んでドイツで抽象映画を撮っていたヴァルター・ルットマンがベルリンを撮ったもの。

抽象映画のあの音楽に合わせて幾何学的な模様が動くところから、それが踏切の動きと重なるところから始まる。その後スターギターみたいに音楽に合わせて車窓からの映像がモンタージュされ、電車がベルリンについてからはそのまま街の映像に切り替わっていく。その後も繰り返されるこのシームレスな変化が本当に良い。
ベルリンのその時代を捉えたようなドキュメンタリー的な捉え方と、たまに抽象映画に収束したりする幾何学的な捉え方の間を自由自在に行き来していく。滑稽なモンタージュがあったと思えば、人がその幾何学的な動きに吸収されたりする。それによってベルリンっていう街自体が一つの壮大なからくり仕掛けとして動いているような印象がある。
その行き来の気持ちよさに加えて、全体としてはリズミカルでコミカルなトーンがずっと貫かれていて、見ていて本当にずっと気持ち良い。似たような映画としてジャン・ヴィゴの『ニースについて』があるけど、ニースについてがジガ・ヴェルトフ経由のソ連映画的なハイスピードモンタージュによって街の明暗の対比を行いつつ狂ったようにハイテンションになってくのに対してこっちは終始こなれた感じで優雅。
最後の花火が一瞬抽象的な図柄になってその回転が灯台になる終わり方がめっちゃくちゃに気持ち良い。
河